「高級アルコール系界面活性剤」ってなに?
こんにちは。橋本です。
シャンプーやボディーソープに配合されるものに、『高級アルコール系界面活性剤』という洗浄成分があります。
市販のシャンプーの8割ほどは、この高級アルコール系界面活性剤を、おもな洗浄成分にしています。
にもかかわらず、「高級アルコール系界面活性剤」なんて言葉、初めて聞いたぞ、なんていう方も、多いのではないでしょうか。
なので、ここで「高級アルコール系界面活性剤」について、軽くまとめてみようかなと思います。
高級アルコール系界面活性剤とは
高級アルコール系界面活性剤とは、高級アルコールから作られた界面活性剤のことです。
高級アルコール系界面活性剤には、たとえば次のような種類があります。
界面活性剤の系列 |
界面活性剤の名前 |
略称 |
---|---|---|
高級アルコール系 |
ラウリル硫酸ナトリウム (ドデシル硫酸ナトリウム) |
LS (AS) (SLS) (SDS) |
ラウレス硫酸ナトリウム (ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム) |
LES (AES) (SLES) |
|
ラウレス硫酸アンモニウム (ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム) |
LES (ALES) |
すべてを理解しようとすると、ものすごく、ややこしいので、さらっと流してくださいね。
少し前まで、シャンプーで代表的な高級アルコール系界面活性剤といえば、『ラウリル硫酸ナトリウム』でした。
今では、ラウリル硫酸ナトリウムより刺激の少ない『ラウレス硫酸ナトリウム』が、シャンプーの主流になっています。
『ラウリル硫酸ナトリウム』と『ラウレス硫酸ナトリウム』は、同じものではなくて、まったく違うものです。
しかし、高級アルコールから作られるという面では同じなので、「高級アルコール系界面活性剤」として、同じ系列にまとめることができます。
ラウリル硫酸ナトリウムの作りかた
では実際に、高級アルコール系界面活性剤は、どうやって作るのでしょうか?
『ラウリル硫酸ナトリウム』の作りかたを、カンタンにまとめると・・・
ラウリン酸
↓(還元)
ラウリルアルコール
↓(濃硫酸でエステル化)
ラウリル硫酸エステル
↓(ナトリウムで中和)
ラウリル硫酸ナトリウム
こんな感じで、原料の「ラウリン酸」から一連の化学反応を進めて、『ラウリル硫酸ナトリウム』という界面活性剤が作られるわけです。
なんだか、難しいカタカナばかりで、めげそうになりますが。
原料のラウリン酸から「ラウリルアルコール」を取り出す。
この「ラウリルアルコール」が高級アルコールといわれるものなので、こういうものを「高級アルコール系界面活性剤」とよんでいます。
原料のラウリン酸は、ココナッツオイルやヤシ油を分解して作ってる製品がほとんどです。
つまり、ラウリル硫酸ナトリウムは、化学合成されたものですが、ある意味、植物由来ともいえるわけですね。
現在主流のラウレス硫酸ナトリウム
前まで、よく使われていたラウリル硫酸ナトリウム。
現在は、シャンプーやボディーソープには、あまり使われなくなりました。
理由は、洗浄力がある反面、肌に対して刺激が強めだからです。
そこで、『ラウレス硫酸ナトリウム』の登場となるわけです。
『ラウレス硫酸ナトリウム』は、カンタンにいえば、ラウリル硫酸ナトリウムに「ポリオキシエチレン」をつなげたものです。
なぜ、わざわざ「ポリオキシエチレン」なんかをつなげたかというと、分子量を大きくさせるためです。
分子量の大きいものは、肌に浸透していきません。
肌に浸透しやすかったラウリル硫酸ナトリウムにポリオキシエチレンをつなげることで、分子量が大きくなり、肌に浸透しにくくなる。
ラウレス硫酸ナトリウムは、肌に対しての刺激が弱くなるように、「ポリオキシエチレンをつなげる」という工夫をしたわけですね。
ただし、そのラウレス硫酸ナトリウムも、刺激がまったくのゼロではありません。
肌の弱い人には、まれに刺激になることがあるので、ラウリル硫酸ナトリウムも、ラウレス硫酸ナトリウムも、旧表示指定成分でした。
なぜ、よく使われるのか?
市販のシャンプーは、高級アルコール系界面活性剤がよく使われてきましたし、今もなお主流の洗浄成分です。
どうしてかという、最大の理由は、安いことです。
そして、泡立ちやすく、洗浄力もあります。
そのため、肌への刺激を考えて「石けん分」が主流の洗浄成分として採用されているボディーソープでも、多くの製品は、泡立ちや洗浄力をよくするために、ラウレス硫酸ナトリムなども加えています。
強めの洗浄力による、洗い流したときのサッパリ感は、清潔好きな日本人の好みにも合っています。
つまり、「高級アルコール系界面活性剤」は、価格と機能のバランスがすぐれ、なんとなく感じる好みにも合っているんですね。
泡立ち、洗浄力、低刺激など、機能面を工夫をした界面活性剤は、どんどん新しいものが開発されています。
しかし、「高級アルコール系界面活性剤」以上に、価格と機能のバランスがいい界面活性剤というのは、なかなか出てこないのが現状です。
結局のところ、いくら機能面だけがよくても、普及はしてくれないですし、普及しないことには、価格も安くならないんですね。
洗浄剤に対しても、正しい評価、正しい情報が広まれば、よりよい洗浄剤が普及しやすくなるわけです。