【お客様は神様です3】
さてさて、
借景ってご存じですか?
借景とは、
遠くの山や緑など敷地の外の景色をその庭の一部であるかのように利用する造園法やプランニング法のことです。
島根県の足立美術館の庭園なんか有名ですね、
ただあれは借景にする景観を守るためにその借景の山まで買い取っっちゃってますから実際は借景じゃなくて庭ですけど。
まあ、
そんなお宅の話し。
とある企画依頼のお客様、
そのお宅の敷地横には綺麗な公園がありました。
そもそもがその公園の綺麗な緑豊かな景色が気に入ってその土地を購入された方がそこにご自宅をお建てになるに当たって私どもにご依頼頂いたという次第です。
当然その公園の緑が目的で土地を決めていますから、
その緑を借景にとのご要望でそのお宅は企画が進みます。
居間や寝室の大窓からは公園の緑が一面に飛び込んでくる、
そんなプランが出来上がり提案しました。
そんなある春の日にその現地を見に行ったお客様から連絡がありました。
先生、
すぐ敷地に来てください!
と。
そこで敷地に行きますと・・
なんと敷地に面する公園の敷地の真横にある大きな大木が、
素晴らしく立派な桜の木だったのです。
しかもそれが丁度満開!
咲いてない冬に見ていたので気が付かなかった。
これは良い!
素晴らしい!
そこでお客様、
春はこの満開の桜が家の中に飛び込んでくるよう借景にしたい!
とのこと。
私としては大幅な設計変更にはなりますが、
こんな話しなら文句はない。
早速そうしましょうと、
ホールの向きを変え大窓を設けて、
満開の桜が一面にホールに飛び込んでくるようなプランに変更です。
このプランを大層お気に召したお客様、
早速ご依頼頂くこととなりました。
来年の春までに入居予定です。
設計は順調に進みますが、
お打ち合わせの際に若干の違和感が、
でもまあ、それもいいかと進みます。
工事も順調に進みます。
何しろ来年の春までには入居をしなければなりません。
そして、
無事工事が終了し、
春です。
桜満開の中お宅は完成しご入居。
お客様も大層お喜び頂きやれやれです。
そして、
さらに翌年の春。
そのお客様からお電話があったのです。
それがえらくご立腹で?
いったいなに?
実は、
その公園の立派な桜の木、
立派なのは年代物だからでいろいろ支障が出ていたらしく、
植え替えのため冬の内に役所によって切り倒されてしまったらしいのです。
聞いた私は絶句・・
残念です。
もちろん新しい桜はその後に植えられたようなのですが、
前のような立派な桜ではありません。
でも、
勝手に借景しておいてそれがなくなったからって怒られても、
私に言われても・・
役所に抗議するって・・
知るかよ。
いや、
お客様にそんなこと言っちゃいけないのです。
何しろ神様ですから。
ただ・・
実はそのお客様、
公園の緑をLDや寝室の借景に、
桜の大木をホールの借景に、
なんて要望されたのに、
ご自分の家の庭には一切緑や植物はいりませんて、
全部コンクリのたたきにって、
桜の木のこちらにも桜植えましょうかって言ったら、
絶対に嫌ですって。
虫が嫌!
土は汚い!
緑の世話はしたくない!
葉っぱが嫌!
抗菌抗菌!
だから植栽は嫌!
昨今はそんなお客様ばかりです。
ま、嫌ならそりゃしょうがない。
だけど、
それで隣の桜がなくなったから文句って、
どうよ?
って思ってしまった私なのです。
どうなんでしょ。
Atelier繁建築設計事務所HP
http://ateliershigeru.com
よもやま建築日記~家づくりの現場から~
http://ameblo.jp/ateliershigeru/