【住宅各論:外壁4 金属パネル】




金属パネルってご存じですか?
建築の外壁材料なんですが。
ビルなどで使われる金属製の外装材になります。

 

これは見た目は住宅の金属サイディング板金と同じに見えますが、

実はまったく違うものです。

金属系の屋根材とか外壁のサイディング材や金属板金など金属系の外装材ってのはたくさんあるのですが、



こういった金属のつまり、
ガルバリウム鋼板とか、
ステンレス鋼板とか、
フッ素樹脂鋼板とか、
アルミとか、
の材料を使って屋根とか外壁とかの仕上げ材にするもののことを
金属系外装材といいますが、

その金属系の外装材の中に金属パネルという物があります。

 



金属パネルというのは大きなビルなどの外壁やキャノピーなどで使う材料で、
住宅や店舗などで使われる金属系サイディングなどとはまったく違う物です。
 

 

緑色の部分が金属パネルでグレー部分がスパンドレルです。

 


元の金属自体は同じガルバリウム鋼板やアルミやフッ素樹脂塗装鋼板です。
見た目もその部分だけを見れば同じように見えます。
でも違う物です。

そう・・
見た目は同じなんです。

では何が違うのか?
それは、その金属の厚みです。

厚みは見えません・・



たとえば住宅の外壁の金属系サイディングスパンドレル波板に使う金属の厚さは、
だいたい0.2~0.4mmです。

たった0.3mmって嘘でしょって?
いえいえ本当にそんなもんなんです。

何で?
金属は重いんです。
そして、
金属は強いんです。

木造などの住宅の屋根や外壁にはそのくらいの重さの物までしか使うことが出来ません。

さらには住宅の場合板金屋さんが現場やお店で金属板を加工するのにはそのくらいの厚さまでしか出来ないんです。


たとえばで計算してみましょう。

鉄の比重は7.85です。
メーターサイズの鉄の板1枚
厚さ:0.3mm
縦 :2.0m
横 :1.0m
200×100×0.3×7.85=4.71kg



つまり2×1mのメーター板1枚で厚さたった0.3mmでも4.71kgの重さがあります。

建築工事の際はこれを何十枚何百枚も一生懸命持って上がって屋根や外壁に張るわけで、
外壁にはそんな重い物を何枚も何枚も貼り付けることになるわけです。



ただ、この鉄系の金属という物は薄くても強度や耐久性はあるのですが、
残念なことに一つだけ欠点があります。

それは鉄系の金属はどうしても加工する必要があるために柔らかい軟鉄で出来ており、
そのために大きい面にすると波打つのです。

これを解消するために鉄系金属の薄い板は波とか角とか板状などに折り曲げられて使用されます。
 

 



これがスパンドレルと呼ばれるものになるのです。



住宅などではあまり重い板は使用できないのでこういったスパンドレルがサイディングなどとして使用されるわけです。



これに対しビルなどの場合、
もっと厚い板を使います。

ビルなどの金属パネルに使う場合は、
1.5~2.5mmくらい。



ビルの場合何十階もあったり大きな広い外壁などがあり、
台風などで強風が吹き付けたり、
物が飛んできて当たったり、
住宅などとは比べものにならないほど地震で大きく揺れたりします。

がそんな何十mも上の方とかものすごく広い壁ではそう簡単には修繕したりは出来ません。
なのでもっともっと壁に強度や耐久性が必要です。



あるいは大きなビルには大きな板が必要です。
全体が大きいのですから小さな物や細い物をたくさんたくさん貼っていたのでは工期もやたらかかりますし、施工誤差も大きくなってしまいます。
そこで大きな板が波打たないようする必要があります。

そのために金属系の外壁の場合もっと厚い鉄板を使うわけです。



そんな鉄板が厚さが2.0mmになったとすると、
200×100×2.0×7.85 =31.4kg

たった2.0mm厚でも、
こうなるともう人間の力では何枚も運んで貼るなんてことは簡単には出来ません、
木造の構造体などではとてもじゃないけどその重さを支えることなど出来ません。



ただビルは重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造ですから建物の構造体が住宅などよりずっと強いので重い物も張ることが出来ますし、
工事の際もタワークレーンやリフトなどが当たり前に設置されますので重い物でもたくさん運ぶことが出来るので可能になるわけです。

逆に言うと構造体がより強固で、
大きなクレーンやリフトなどで建材などを運ぶことの出来る大きな建物の現場では、
こういった大きくて重い建材を使うことが簡単に出来るわけです。



意匠的には、
こういった厚い金属の板は住宅用の薄い板と違い波打ちません、
まっすぐになる。
これをいろいろな形に加工してもピシッとまっすぐになります。

そこでこういう厚い金属板をパネル状に加工して隠しビスで留めるようにし、
物によっては裏側に断熱材や防火材を裏打ちした物が金属パネルと呼ばれる外装建材になります。

これを使うと、よくビルの外壁やキャノピーなどで見かけるようなシャープでスカッとしたデザインが可能になります。



わかりやすいところでは、

駅舎とか・・

 

大阪の蒲田の駅ですか、外壁全部パネルですね。

 

 

空港とか・・

 

セントレアですね、中ですけど。

 

これは羽田ですか、これも中ですけど。

 

 

成田とか羽田とか関空とか中部ではセントレアとか、
みなみな金属パネル張りが大流行ですね。

ちょっとどこ行っても同じようなデザインで言われないとここがどこの空港かわかんなくなるくらいですが?
まあそれは置いといて、

壁とか柱とか天井とか、
み~んな金属板ですよね、
あれです、あれ。

あれが金属パネルです。



困ったことに、
たまにそういうビルづくりの建材を住宅にも取り入れたい!
なんていうお客さんや設計者なんかもいらっしゃいます。



どっかで見て格好いい!
ちゅうわけなんですが・・



こればっかりはちょっとやそっとではないお金がないとどうにもなりません
技術や発想や工夫ではどうにもならない。

だって厚み0.3mmが2.0mmです。
物の量だけで7倍近くになります。
つまり値段も7倍です。

さらにこの厚さでは板金屋さんが現場や店で加工なんて出来ませんので、
一枚一枚全部工場で製作した上でトラックで少しづつ持ってきてクレーンで吊って設置しなければなりません。
住宅の建築で建て方以外の日に毎日クレーンを持ってくるなんてえらいことです。

しかも木造の柱や梁や合板なんかでは重すぎて取り付けできません。
それを張る部分は全部鉄骨造か何かの強い構造体にしなければなりません。



これが、
ビル作りと住宅作りの違いです。
外装材だけ見ても根本的に作り方が違います。

出来上がった見た目は同じように見えても中身が根本的に違うわけです。
 

 



昔、
そういう金属パネルを外壁やポーチにたくさん貼った家の相談を受けたことがあります。

設計者がそういう家を作りたくて設計したのだそうなんですが、
見積もり金額が予定額の3倍になってしまったのだそうです。
5000万くらいの予定の家が1億5000万。

若い設計者で大きな事務所にいた人だったのでそれしか知らなかったのかもしれません。

結局そのまま完成していたようですからお客さんは相当なお金持ちだったんでしょう。
ただお金の支払いでは揉めて裁判沙汰になったのだそうです。

えらいことです。




Atelier繁建築設計事務所HP
http://ateliershigeru.com
よもやま建築日記~家づくりの現場から~
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