適当な広さ。 | よもやま建築日記~家づくりの現場から~
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愛知で家づくりをする建築士が日頃、思ったことや考えたことなどを徒然に、さらにはちょっとした家づくりのヒントや知識などを気の向くままに書いております。建築にはいろいろな考え方がありますが私達の考え方や取り組み方などをお伝えできればば幸いに思います。

適当な広さ。






いつものことなんですが・・



どんな建物を建てる時でもお客さんの望むその広さというのは実に主観的で計りにくい物です。



どういうことかというと、お客さんはたいてい例外なく言います・・「広い部屋が欲しい」

この「広い」というのは、どの程度「広い」ということなのか?ということで、この「広い」というのは実は人によってまちまちなものです。

だいたいの人は今の自分の家より「広い」・・ということなようですが。



ある人の場合は、「広い」と感じても、違う人は「狭い」と感じる・・

口で「広くして下さい」などと言われるよりも、むしろ「何畳は欲しいです」とはっきり言ってもらった方がこちらとしてはわかりやすいのです・・



そんな「広い部屋」・・というのはどのくらいの広さのことなのか?などということをディスカッションの中から導き出してくるのも我々の腕の見せ所ではあるわけです。





ところで、そんな「広さ」という物も膨大な幻想などを持って・・言い方が悪いでしょうか?

そう・・過大なる幻想を持って「広さ」にあこがれている方も多々いらっしゃいます。



「このくらいでどうですか?」

「そんな狭い部屋はいりません!」

「では、これでは?」

「もっともっと!そんな狭い部屋なんか造るくらいなら家なんて建てたくありません!」



あなたの望む居間は現実には不可能なほど広いんですが・・・

まあお金さえ出してもらえればなんぼでも大きくしますが、実際の所異常に大きな部屋にはそれに見合っただけのリスクが発生します。



まず、当たり前な話ですが建設コストがかかります。

木造や2×4などの構造体では一部屋の大きさには限界がありますから、壁や柱なしで大空間を造るには構造体から重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造にする必要があります。

坪当たりいくら・・なんて考えでははじけない金額の建物になりますし、設計料にしたって倍増します。



それから、ランニングコストがかかります。

大空間は室容積が大きいので一般的な住宅用エアコンなどではとても冷暖房がまかないきれません、当たり前に200Vです。

照明にしても部屋が大きいということは天井が高くなるということで、照明器具もそれなりに・・さらには当然室容積が大きいので照射部分が累乗に大きくなりますから数も莫大に・・まあ天井低くてもいいのなら構いませんが・・それはそれでチンチクリンです。



そして、これが根本的な所ですが、実際に住むには住みにくい・・使うには使いにくい・・

まあこれも主観的なことではあるのですが、部屋が異常に広いとちょっと灰皿を取りに行くだけでかなりの距離を歩かなければなりません。

トイレに行くにも相当な距離を歩いていくことになります。

お掃除に至ってはめちゃくちゃな量をやって頂く必要があります。





広ければ広いほどよい?のでしょうか?





どんな人にもどんな住み方にも「適当な広さ」という物があるはずです。

「広さ」にも目的が必要なはずです。






その部屋で何をするのか?

これをするためにこの「広さ」が必要。

これを置いて使うためにこの「広さ」が必要。

もちろんそれにはある程度将来を見越した部分が必要で・・

さらにはある程度の「余裕」も必要でしょう。



「必要な広さ」に「将来性」と「余裕」を加味した物が「適当な広さ」ということになります。





とあるお宅を建てた時のこと・・

建物としては4LDKで45坪ほどの価格的にも一般的なお宅です。

このお宅の御主人はお風呂にたいへんな夢と希望をお持ちだったわけです。



温泉みたいなお風呂がほしい・・

夢は夢でよいのですが、温泉は温泉地にあるから良い・・なんて私は思うのですが。

何度も何度も話し合います、本当に必要ですか?




かくしてそのお宅には他の部屋をみなみな小さくして、在来工法で石張りのテラス付き風呂場だけで8畳はあろうかという立派なお風呂が出来上がりました。

竣工当時はたくさんのお客さんをお風呂に招きます。

自慢のお風呂です。



が・・・
今、そのお風呂はあまり使っていないようです。

なんで?




まず、冬は寒くて入れない・・

広すぎるんです、暖房機や床暖房まで入れてあるのですが風呂を暖かくするためには2~3時間は前に暖房を入れておかなければなりません・・

とんでもない電気代です。

そもそも、そんなめんどくさいこと出来ない、すぐ忘れる。

温泉お風呂は常にお湯を沸かしていますし、常に人がいますから・・



そしてランニングコストが莫大にかかる。

そんな大きなお風呂に通常サイズの浴槽というわけにはいきません、当然浴槽もそれなりのサイズになります。

御主人としては家族みんなで楽しく入りたい、とか、お客さんと一杯やりながら入りたい、なんて考えていたわけです。

通常、一般的な浴槽の水量は300Lくらい、よっぽど大きくても400Lくらいでしょう。

ところがジャグジーのような2~3人が入るお風呂の場合は600とか700Lは必要です。



1回お風呂にはいるのに一般的な浴槽の倍の水とそれを沸かすためのガスや電気、そして時間が必要なんです。



もちろん24時間風呂にするとか方法はありますが、それにしても・・





で、奥さんがその水道代とガス代に絶句して使用禁止に・・

だって普通のサラリーマンのお宅ですからガス代水道代で月に5万円なんて払えません。

設計前からランニングコストの試算は当然出していたのですが、造る前ってのは盛り上がっていてなーんにも気にしていなかったようです、24時間風呂なんだから・・なんてたかくくって。



かくして今はご近所のご実家のお風呂とスーパー銭湯に通い、月に何度かお宅のお風呂を楽しむ毎日なようです。

最も御主人はそれはそれでそれも楽しくてよいようですが。






またまたあるお宅の居間での話。



ピアノを置きます、それもフルサイズのグランドピアノ!

と・・

お話を伺って・・



ピアノはでかい、しかも重い!

グランドピアノってのも実はいろいろなサイズがあります。

フルサイズのコンサート仕様となると奥行きだけで2300mmくらい、椅子まで含めると3500mm×3000mmくらいのスペースが必要ですし、重量も400kgくらい、それが足のある4点に集中加重になります。

スペースはもちろんのこと特別な床構造が必要なのです。



ところで、誰がピアノ弾くの?

奥さん?

見たことないなあ・・

今現在・・お宅にピアノ見あたりませんが?

グランドピアノをってくらいですから相当な腕の持ち主が・・



実は私の妹は中学校の音楽教師・・元はずーっと子供の頃からピアノが好きで音大を目指していた口で、相当な腕前なのですが、それでもグランドピアノは持っていない。



「うちの子にピアノ習わせようと思って」

「今までは狭かったのでピアノ置く所がなかったから」







・・・???






これから?








大金持ちなら何も言いませんが・・。






お客様のご要望には誠心誠意お答えいたします。





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