鹿児島ライブは、70人もの方の支援を頂いてるので
始まりからずっと一緒に旅を楽しめるようにFBで動画や写真を出し続けていた。
実際あの通り、楽しかったし、
たくさんの人が一緒にリアルタイムで楽しんでくれていた。
 

と、同時にとてもドキドキもしていた。
ほんとは、ライブ前はめっちゃ緊張している。
そのくらいのほうがうまくいく。
こんなに楽しんで、しかもはしゃいでシェアしてって。

12;30会場入り
その後の開場まではけっこうタイト。
それでもいつものペースで始めると
千春ちゃんが不思議なことを言う。

「ちょっとどうしようこれ・・・」
「なに?」
「サスティーンがおかしい」


サスティーンとは、音を伸ばすための機能。
店にあった電子ピアノの様子がおかしい。
ペダルを踏んでいないのに音が伸びている。
「ううむ」
小山君も店の人も加わって、謎に迫る。
そうこうしていたら今度は
サスティーンが全面的に効かなくなった。
もはや、やりたいことがかなりできない状況になってきて

「近所のスタジオからピアノ借りよう!」

その段取りがついたところで、店のオーナーが工具を持って現れた。
器用に問題部分をいじると、
サスティーンは元の機能を40%くらい復活させた。

千春ちゃんが涙目で言う。


「この子、換えられたくないんやと思う。触られてないから寂しいねん。」




この店に、わけあってやってきたこのピアノは
ほとんど使われてなかった。
べたべたになっているのを千春ちゃんが拭くところからだった。
楽器は生きてる。
ありうる話だ。
40%だけど、今日はこの子にかけてみようと決めた。
そういうことなら、共鳴させていけば鳴るはずだ。
ピアノに両手を置いて約束する。

「わかった。今日はよろしくね。いっぱい楽しもうね。」

もしかしたら途中でだめになるリスクを抱えながら間もなく開場だった。

開場時間を遅らせてもらっても十分なリハができなかった。

数分で曲順を構築し、着替えて化粧したら、もう呼ばれた。

控室の扉を開けたら知らない人ばかりだった。
しかも、そこにいるのは「支援者」だったり、遠く県外から
飛行機や新幹線で来てる人たちだったり。

今日のライブはノーカットで支援者に届けられるものだったり。

冒頭で話そうと思っていたことが出てこない。
ふわっとしたまま1曲目。

「満月」だ。

ピアノのニュアンスが違う。
空気が違う。
足が震えていた。

歌いだしたら、思うように音が出ない。
ラを出してるつもりなのにフラットする。
全然ピッチが安定しない。

楽器が重なってくる。
いつもと違う。ベースが違う。ギターも違う。
アンサンブルだからひとつ変われば万華鏡のように
干渉し合うのだ。場と、楽器と、機材と、心と、体が作る。

大丈夫か?今日のライブ大丈夫か?


怒涛のプレッシャーに襲われる。
歌詞間違える。

混乱してるうちに「満月」が終わってしまった。
「満月」は苦しい歌なのである。
苦しい歌だから苦しそうに歌いたくない。
可愛く歌いたかったけど出なかった。

今谷さんの伊勢での言葉を思い出す。
「どんな状況でもやることやるだけです。」
今谷さんは絶対言い訳しない。

 


 

今日は今日のイリス。
グラウンディング鬼の今谷。
創造主の千春。
応用神の小山。
大丈夫。絶対大丈夫。

 



手首に巻いていたものを全部はずした。
【そうすれば大丈夫】という設定にした。

2曲目は「翅の音」。
祈るように歌った。
 


ピアノもギターもいつもより角張ってる。
でもそれが今日の翅。
優雅で柔らかい翅じゃなく
ちょっと粗くて野性味のある翅。
悪くない。

声が出た。

楽器を信じろ。

自分の喉を信じろ。
いつだって試されろ。
ここ越えたら次のステージだ。