吉開菜央監督作品『Shari』鑑賞と逗子「TAKURO」の葉山牛もも肉のソテー | 野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

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吉開菜央さんはダンサーにして映像作家、そして今年の第10回エルスール財団新人賞コンテンポラリーダンス部門(選考委員:乗越たかお)の受賞者である。その彼女からお知らせをいただき、昨日「らせんの映像祭2021」での『Shari』の上映にうかがった。

 

 

 

 

私の日曜日は少々きつい。朝一からフラメンコ教室があり、その後エルスール財団記念館でのイベントや講座にたずさわっているためだ。「らせんの映像祭2021」の開催場所が逗子と聞いた時には「ちょっと無理かな?」と思ったが、湘南新宿ラインを利用すれば記念館から2時間弱で行けることがわかった。

 

スタッフに記念館の片づけや戸締りを頼み、15時半に記念館を出発。井の頭線で渋谷に出て、16時20分渋谷発の湘南新宿ライン逗子行きに乗り込んだ。長旅(?)に備えて本を2冊持参した。

 

17時21分、終点の逗子駅着。初めて降りる駅に心躍る。グーグルマップで目的地の逗子文化プラザホールの場所を確かめるが、すでに暗くなっているうえ、駅前のロータリーから伸びる道が5本あって、どれを選べばいいかわからない。そこで、ちょうどやって来たイトーピア中央公園行きのバスに乗り、一つ目の逗子・葉山駅で降りた。するとすぐ目の前に逗子文化プラザホールの建物があった。案ずるより産むがやすし!

 

18時10分からと聞いていたが、前のパフォーマンスが押したのと、サウンドチェックに時間を要したことで20分以上押して上映が始まった。最初に『ナイトシュノーケリング』、次に初の長編作品『Shari』だった。

 

『ナイトシュノーケリング』(13分)は大学院時代からの知り合いという仲本拡史さんとの共同監督作品。この「iPhoneとスキューバ・スーツを携えた海の冒険」は、偶然から生まれた作品だそうだ。あるダンス公演のために映像を撮ろうとしていた吉開さんと、その吉開さんに三浦半島の沿岸海域を案内しながらiPhoneで撮影した仲本さん。せっかくだからと、お互いに撮ったものを渡して編集しこの作品が出来上がったという。夜の撮影では彼らの人工的な光とプランクトンやクラゲの光が「対話」をする。その時の吉開さんは、まさしく海の生物の一部だったに違いない。美しい映像というだけにとどまらない海の謎に迫る作品だった。

 

『Shari』(63分)は、2021年秋に公開された吉開さんの長編初監督作品だ。舞台は北海道の知床の斜里町。ここに住む羊飼いのパン屋、鹿を狩る夫妻、海のゴミを拾う漁師、世界各国の木彫りを集めた秘宝館の主人、家の庭に住むモモンガを観察する人……など、斜里の人々が登場して、さまざまなことを話す。と、ここまではドキュメンタリーのようなタッチで進んでいたが、パン屋さんの女性が窯でパンを焼き、それを赤い布に包んで出かけ、森の中にそれを置くところから一気に緊張感が高まる。「赤いやつ」がそれを見つけ、ムシャムシャと食べるのだ。この「赤いやつ」を監督の吉開さん自身が演じている。

 

「ヒトとケモノのあいだ

すきまに生まれた、真っ赤なわたし

北の、果てに来た」

 

これは『Shari』のコピーとしてチラシに書かれている言葉だ。「すきま」がこの映画を読み解く鍵かもしれない。「すきま」とは言ってもマイナスのイメージはない。むしろ、何かと何かの境界、境目、へり、先端の部分、つまりedgeといったもののようだ。

 

それを象徴的に描いていたのが、尾根での「雲」と「風」のせめぎあいの映像だった。「風」の方が強いと「雲」がとばされ尾根がみえてくる。しかしバランスが変わると尾根は「雲」で真っ白になって見えなくなる。そうした微妙な境目に惹かれる吉開さんに、私も大いに共感する。

 

斜里は「自然・獣・人間がせめぎあって暮らす」町なのだ。そしてそこにやって来た、脈打つ血の塊のような「赤いやつ」を熱演する吉開さん。詩情豊かでありながら、暴力的でもある。そしてこだわり抜いた音の美しさ。大きな感動をいただいて会場を後にした。

 

すでに21時になっていたので、逗子で急いで夕食を食べて帰ることにした。うかがったのは、駅までの道の途中にあったビストロ「TAKURO」。ジビエ、葉山牛、三浦地野菜、三浦半島でとれる魚など魅力的なものがたくさんある店だったが、世田谷まで戻らなければならないので時間がない。そこで、オリーブと葉山牛もも肉のソテー、三浦地野菜添えを選んだ。生ビールとカオールのワインも。すべてがとてもおいしかった。

 

 

 

 

 

 

こうして夕食を終え、21時44分逗子始発の湘南新宿ラインの電車で帰宅した。疲れてすぐに寝てしまったらしく、目が覚めた時はすでに大崎だった。(笑)

 

素敵な映画とおいしい夕食。少し体にはきつかったけれど行ってよかった! 『Shari』は今後大きなフェスティバルに招かれる可能性もあるような気がします。機会がありましたら、みなさまもぜひご覧になってみてください! 

 

来週に迫った「第10回エルスール財団新人賞」授賞式での吉開さんのパフォーマンスもとても楽しみです。