菅政権はジリ貧崩壊目前 (日刊ゲンダイ2010/12/21)


◆追い詰められたのは菅首相の方

菅・小沢会談の物別れを受けて、民主党の岡田執行部は「離党勧告」や「証人喚問」に動き出した。小沢憎しのメディアもその流れを既成事実化しようと躍起だ。だから、テレビや新聞を見ていると、どうも小沢が追い詰められたように感じる。
だが、その見方は逆だ。追い詰められたのは菅の方である。
「小沢さんに断られるのは分かっていたのに、全く理解に苦しむ会談でしたね。通常、トップが出てくるのは、ある程度のお膳立てができて、最後の仕上げの場面。いい方向に進む確証を得てから乗り出すものです。そのうえ会談時間は1時間半。長すぎます。お互いの主張は平行線だったといいますから、小沢さんが相当、菅さんをやり込めていたのでしょう」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
菅は「政倫審に出てくれ。あなたは協力すると言った」の一点張り。感情ムキ出しで、興奮状態だったという。オソマツ極まりないとはこのことだ。勝算も解決の見通しもないのに、小沢を呼びつけてサル芝居を打つ。だが、自民や公明の野党は無視を決め込み、さらに民主党分裂を煽るハラだから、政倫審招致の議決さえもやれない。自分らで騒いで、進むも退くもできなくなっている。マヌケを絵に描いたような、どうしようもない男だ。


◆党内外でバカにされている菅の敗北


菅という男は、目先の権力欲しかなく、いつもこうやって短絡的に動いて失敗する。参院選では自民党の攻撃をかわそうと突然、消費税増税を口にして、ヤブヘビの惨敗。中国漁船衝突事件でも、前原国交相(当時)にそそのかされて船長を逮捕したものの、その後は腰砕けと迷走を重ねた。
スッカラ菅で中身がカラッポ。おまけに振付役の仙谷はポッと出だから、深く考えない決断は、いつも裏目に出るのだ。やることなすことヘマばかり。そうやって支持率を落としてきたのに、困ると「悪いのは小沢だ」と問題をすり替えてしのぐワンパターン。こんな低能無力の政権が長続きするわけがない。続いてきたこと自体が七不思議だ。さすがに党内からもこんな声が出てきた。

「毎度の菅首相の発言には呆れ返る。この首相の頭の中はどうなっているの? (代表選で)菅支持をした私の不明を恥じる」(増子輝彦・前経産副大臣)
みんなの党の渡辺喜美代表からは「脱小沢で内閣支持率を上げようという魂胆がありありの茶番。3匹目のドジョウはいない」とちゃかされる始末だった。ここまで見透かされると転落は早い。
「小沢問題の結論を来週27日に先送りしましたが、そこで決まる保証は何もない。この話をどうやって終わらせるつもりなのか。まったく常軌を逸してきていますね」(野上忠興氏=前出)
小沢問題が暗礁に乗り上げる中、来年度の予算編成も放ったらかしだ。仙谷の問責問題や内閣改造も迫っているが、あすの作戦さえ立てられない菅に、三つも四つものことが同時にこなせるのか。小沢との直接会談で確実に分かったのは、ジリ貧の菅政権の崩壊がすぐそこに迫ったことだ。


◆小沢の「疑惑」を具体的に提示してから批判しろ

それにしても、狂っている。日本の政治は、なぜこんなドツボにはまり込んでしまったのか。
冷静に考えれば、小沢の「カネ」の問題なんて、別に国民生活に何の影響もない。税制改革や予算編成などと違って、得するわけでも損するわけでもない。まともな国民ほど、もうウンザリなのに、民主党執行部と大マスコミは、バカみたいな大騒ぎだ。そこまでして小沢を葬りたいのなら、そろそろ小沢問題の何が疑惑なのか、具体的に提示したらどうなのか。
1年以上も東京地検特捜部がメンツをかけて捜査しながら何も出なかったが、NHKや朝日新聞は隠された疑惑をつかんだとでもいうのか。そんなもの、何もない。ないから「政治とカネ」というアイマイな言い方でゴマカし続けているだけなのだ。
小沢捜査を見続けてきたジャーナリストの魚住昭氏がこう言った。
「半年前までならともかく、新しい材料が何も出てきていない小沢さんのカネの問題を、今さら騒ぐのは、それしか菅政権を浮揚させる材料がないからです。“疑似争点”にして騒いで、小沢さんを悪者にすることで、“菅政権は善”という構図をつくりたい。政治ジャーナリズムまでそれに協力していますが、狙いがミエミエだけに、すでに国民の方は興味を失っている。“政治とカネ”を騒ぐ新聞記事も読まれていませんよ。民主党もメディアも、いつまでもこんなことをやっている場合じゃないでしょう」
菅や仙谷、岡田は国民をナメすぎだ。


◆狂騒に溺れるのは菅とメディア

「結局、小沢の政治力が怖いから、寄ってたかって排除に動いているのです」と語るのは、元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏だ。
「民主党の反小沢勢力も自民党もメディアも官僚も検察も、自分たちの存在が脅かされるとか、既得権益を奪われるから、小沢に総攻撃をかけている。そこには正義なんてない。先日は、小沢が衆院候補にカネを配ったことが疑惑のように騒がれたが、自民党の幹部たちはだれもがやってきたことです。メディアだって知っている。小沢をしつこく追いかけ回した検察にしても、内部腐敗でガタガタになっている。堕落した検察に小沢を排除する資格があるのかと、なぜメディアは問わないのか。正義なき権力側に叩かれ続ける小沢の存在は、逆に評価されてしかるべきなのです」
能力がないのに政権にしがみつく菅や仙谷は、小沢から「内閣改造をしないと来年の国会は行き詰まる」「統一地方選に惨敗する」と言われるや、狂ったように小沢排除に出てきた。正論を吐く実力者の小沢が怖くて仕方ないのだ。魚住昭氏(前出)が言った。
「他にやるべき政治の課題が山積みです。朝鮮半島はまたキナ臭くなっているし、日本と中国の関係も微妙なまま。国民生活は苦しみが増している。そういう肝心なことを差し置いて、小沢さんのカネの問題だけに関心を向けようとする菅政権とメディアから、国民は距離を置き始めている。小沢さんが政倫審出席を拒否したのも、空気が読めているからなのです」

せめて国民だけは、目くらましの狂騒に巻き込まれないことだ。そうすれば、政治の劣化の元凶である菅・仙谷コンビは間違いなく自滅崩壊していく。




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