昨年春クールでドラマ化された、
パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~の原作。
ドラマでは主役2人、
小比類巻警視正と最上博士が、
原作とは違って、東大の同じ研究室の同期、ではなかったけれど、
ディーン・フジオカと岸井ゆきのが、
どう見ても同級生には見えない、故の改変だったのだと思う。
ドラマを見て原作を読み始めたのだが、
この原作、ドラマより数段面白い。
もっともこのドラマはHuluとの共同製作で、
Huluで独占配信された、
SEASONS2の方は見ていないので、
断言はできないけれど。
出てくる専門知識や専門用語が半端ないので、
理系小説が苦手な方にはお薦めしないけど、
東野圭吾のガリレオシリーズや、
森博嗣を楽しめる人ならいけるはず。
パッと見はA.I.とかクローンとか、
近未来のSF的な内容に思えるのだが、
よく考えればもう間近に来ている。
私達が知らない、或いは気づいていないだけで、
既に実用化すらされているかもしれない。
そう考えるとちょっと怖くなる。
中に完全自己完結型の人工腎臓や人工肺が出てくる。
完全自己完結型とは、埋め込み式で独立型で、
つまり1度移植すれば永遠に動き続ける、という代物。
既に人工心臓も完成している、という設定で、
もしそれを移植すれば、心臓死は無くなる。
だが他の部位は老化するので、
当然不具合か出てくる。
その度に新たな人工臓器と取り替えていけば、
果たして人間と言えるのか?
そういう重い命題を突きつけてくる。
一方、臓器移植をした場合、
ドナーの嗜好や記憶をレシピエントが受け継ぐ、という話は前から結構あって、
記憶は脳だけにあるのではなく、
臓器にも、場合によっては細胞一つ一つにも、
宿っているのかもしれない、という仮説も出てくる。
人工臓器を次々使って生き続ける、というのは、
森博嗣のWシリーズの前提設定なのだが、
そっちを読んだ時は完全にSFの世界として読んでしまった。
そうではないのかも!?
近い将来、改造人間ばりの、
治療という名の医療が出てくるかもしれない。
医学も科学もどんどん進歩する。
一昔前には不治だった病に、打てる手が増えていく。
それ自体は、患者にとっては素晴らしいことだと思うけど、
どこまでも無限に進んでいいのか?と、
不安にも思えてくる。
そう考えさせただけでも、
このシリーズは読む価値があるのではないか、と思っている。
そしてまだ継続中のこのシリーズが、
どういう着地をするのか興味がある。
あ、この作者、中村啓(ひらく)氏は、
東京理科大理工学部応用生物学科中退、だそうだ。
バリバリの理系作家な訳ね。
納得。