「脅迫の影」(1959年作品)感想 | 深層昭和帯

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若杉光夫監督による日本のサスペンス映画。出演は青山恭二、高田敏江、山内明。

 

 

<あらすじ>

 

ドルの買取で大儲けしていた中国人が手下の日本人4人に殺された。4人は金を分け合い、めいめいに逃げた。ところが、仲間の工藤が殺されたのをきっかけに、他の3人にも黒い影が忍び寄る。不安になった3人は、新聞記事を探すが、どこにも記事は出ていない。

 

中村は陸橋から突き落とされて死んだ。仙田が死んだとの知らせが届く。残るひとり、久平には脅迫状が届いた。愛人と逃げる算段をつけるも、そこに金を返せと電話が掛かってくる。中国人は死んでいない。彼はいまだ多くの手下を持ち、久平を監視していた。

 

金の受け取り場所から、運び屋を尾行した久平は、死んだはずの仙田が立っているのを見て驚愕する。仙田こそが、死んだ中国人の死体を片付けて生きているように見せかけ、工藤と中村を殺した犯人だった。

 

悪党とその女たちは互いに殺し合い、争いから倉庫に火がついて、死体と奪った金もろとも灰燼に帰すのだった。

 

<雑感>

 

1時間のサスペンス映画。短い時間でテキパキ話が進んでいくのが良い点だ。久平がとんだ悪党で、その悪党が脅迫によって追い詰められていく。ところが、脅迫している方も悪党。悪党同士で最後は殺し合い、すべてが灰になる。この展開がすこぶる留飲を下げる。

 

古い映画は、昨今の作品よりよほどテンポがいい。それは短い時間の中に物語を詰め込んでいたからだ。映画のスタッフが撮った「ウルトラQ」のいくつかの話など、まさに映画的展開でものすごい速さで話が進んでいくものがある。

 

演出がもったりするようになったのは、人間の内面を描写するとの理由で、日常シーンを長々と映すようになってからだ。昔の作品は科白も速いし、食べる速度の速い。そんなものに時間を使っていられないからだ。

 

☆3.6。1時間の作品でも、満足感は高い。ただ、昨今の原作付きミステリーと比較すると、トリックも含めて稚拙なのが残念だ。