日本LD学会第22回大会に参加してきました!

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パシフィコ横浜での開催です。

20131014_日本LD学会第22回大会


「多様なニーズへの挑戦-たて糸とよこ糸で織りなす新たな教育の創造-」が今大会のテーマで、子どもの学びには時間的な流れ(たて糸)と教育・福祉・医療・家庭・地域などの空間的な広がり(よこ糸)の双方が必要だとの思いが込められています。


今回で3回目の参加となりますが、今回は過去2回と違って初日はひとつのホールだけでプログラムが進むというものでした。
参加するプログラムに迷う必要がないので落ち着いて参加できてよかったです。


『インクルーシブ教育の中でLD教育の次の課題を考える』

上野一彦氏(一般社団法人日本LD学会理事長)


昨年20周年を迎えたLD学会の設立当初から今に至る流れをお話しいただきました。


LD学会は先生(Teachers)と保護者(Parents)、専門家(Professionals)によって構成されていることを常に意識すべきである、とのお言葉がありLD学会に参加するとそれを強く感じます。


いつもお世話になっている親の会の先輩方、昨年お世話になったS.E.N.Sの会(特別支援教育士の有資格者の会)兵庫支部会に所属しておられる学校の先生方、普段お世話になっている病院の先生にお会いすることができました。
今回は3000人ほどの参加者が見込まれているそうで、子どもたちの味方になってくださる方がこれだけたくさんいてくださるのだなと思うと、非常に心強く感じます。


上野先生は特別支援教育士資格認定協会の副理事長をされていることもあり、お話の中で有資格者についても触れておられました。
支援のプロであるS.E.N.Sの有資格者がいる地域は安心できる、現場で問題が発生したらそれに自分の力で対処できるから、というお話でした。(先日全国LD親の会の特別支援教育支援員養成講座では地域により有資格者の数にかなりの開きがあると竹田契一先生からお話がありました。)
自信を持って有資格者を送り出していることがよく伝わりました。


LDに対する啓蒙からLDに関心のある人をサポートするのが次の役割である、とのことで現在は東京と大阪の合同でLDのスクリーニングキット開発を進めておられるそうです。


ここでお昼休憩。

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海を見ながらお昼をいただきました。


午後は特別講演が三講演と、その講演を受けてのシンポジウムがありました。
この特別講演が今回のユニークな試みで、普段特別支援教育や発達障害に直接関わっておられない各分野の専門家から教育についてのお話をしていただき、特別支援教育のそとを見ることで特別支援教育について見えることがあるのではないかという意図が込められています。


『多様な能力のニーズとインクルージョン教育の本質 ~ 国際化時代の教育先進例としてのオランダの教育 ~』

Naoko Richters氏(オランダ教育・社会研究家)


20年以上前から特別支援教育を実施するために制度改革に取り組んできたオランダの状況とオランダから見た日本の課題についてお話いただきました。


オランダでは言語・文化・価値観が異なる外国籍の人が増えてきたことを背景にして子どもには異なる価値観を持つ他者を受容しともに社会に参加することを教え、大人には子どもを仲間市民として受容することを求める「民主的シチズンシップ教育」が義務化され、インクルージョンの概念が教育理念として定着しているということでした。
日本の通級の考え方も認められていないそうです。


日本は外国籍の人の割合はまだまだ少なくオランダのような背景がないため民主的シチズンシップ教育が存在しないこと、数で測れないものを軽視しすぎているとの問題提起がありました。


『想像する力 ~ チンパンジーが教えてくれた人間の心 ~』
松沢哲郎氏(京都大学霊長類研究所)


アウトグループという発想(「当該の集団の外にいる者」という意味。人間以外のものを深く知ることで、人間とは何かが見えてくるという論理のこと。『アウトグループという発想』より)のもと同じヒト科に属するオランウータン、ゴリラ、チンパンジーを研究することで見えてきた人間の親子関係と教育についてお話いただきました。(アウトグループという発想。)
テレビでも放映されたことがあるチンパンジーのアイとアユムの動画も流れ、非常に楽しい雰囲気の講演でした。


今回のお話は普段父親の子育てや支援への参加に興味がある私にとってなるほどと思うところがありました。


まずオランウータン。
オランウータンは基本的に単独行動で母子だけでの生活。お父さんはどこかにいるけどもほとんど合わない。子育てにも参加しない。


次にゴリラ。
シルバーバックと言われるお父さんと複数の母子で子育て社会が形成されている。
母親+父親というかたち。


それからチンパンジー。
年頃の女性は群れを離れていき、母子とお父さん、お祖父さん、兄弟、いとこで子育て社会が形成されている。
母親+複数の男性(おとうさんズ)というかたち。(ただし男性は子育てに参加せず「いないよりはいたほうがいい良い」存在。)


で、ヒト。
お母さんとお父さんだけでなく周りの大人(おじいちゃん、おばあちゃんだけでなく学校の先生や、近所の人などなど)とで子育て社会が形成されている。
複数の女性(おかあさんズ)+複数の男性(おとうさんズ)というかたち。


動物学者から見ると、ヒトは複数人の大人が複数人の子どもを育てる社会であり、一般にイメージされている「両親による子育て」というのはゴリラの子育てだ、というお話で、そう考えるとお父さんもたくさんいる「おとうさんズ」のひとりであって、他の「おとうさんズ」「おかあさんズ」との関わりの中で子どもが育ってくれたらいいという考え方も「あり」なのかもなという気がしました。
実際うちの場合はたくさんの「おかあさんズ」「おとうさんズ」に助けていただいているのを実感しているので。


『子どもの学びの多様性と保育・授業』
秋田喜代美氏(東京大学大学院)


教育は「問題解決型アプローチ」から「卓越性探求型アプローチ」に移行していく、というお話でした。
ユニバーサルデザインといってもそれにより子どもの教育の2つの軸(安心・居場所感と夢中・没頭)がどれだけ保障できたか振り返りが必要(単にこういう問題があるからこうしました、という一方的な働きかけではなく対話による価値の発見や変化への同行、承認が必要ということだと理解しました)ということです。


1日目終了!