大谷禎之介『図解 社会経済学』を読む
古典派経済学の創始者といわれる人たち,ぺティ,スミス,ケネーらが生まれたころのヨーロッパでは,「国」を上手に「経営」して「民衆」を「救済」すること(「経国済民」[1])が,政府の役割とされていました[2]。そして,この役割をうまく果たすにはどうしたらよいか,という実践テクニックについて考える学問が重商主義の財政学・政策論とか,官房学でこれらに対する批判として古典派経済学は生まれてきました。
それでは,古典派による従来の「経国済民」の思想に対する批判の内容はどんなものだったのでしょうか。それは,一言で表すと「自由放任」論といわれる考え方ですが,テキストでは次のように書かれています(p.6の下から2行目~p.7の1行目)。
それ[資本主義経済]には18(自然に発展して国富を増大させる仕組みが備わっている)のだから,19(政府)は20(経済過程に干渉)すべきではない。
つまり,役所があれこれ指図するのではなく,企業や消費者など民間の自由にさせてくれということですね。資本主義という経済の仕組みは,その方がうまくいくようにできているんだという主張です。ただ,このことを権力者たちに納得してもらうには,資本主義経済というものが「行政機関があれこれ手出し・口出ししないで民間に任せた方がうまくいくような仕組みだ」ということを理論的に証明する必要があります。
経済学は,そのような21(自然的)な仕組みを解明すべき「科学」となったのである[p.7の2行目]。