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人類が衰退し、マシンが君臨する未来。食糧を盗んで逃げる途中、僕は美しい女性型アンドロイドと出会う。戦いの末に捕えられた僕に、アイビスと名乗るそのアンドロイドは、ロボットや人工知能を題材にした6つの物語を、毎日読んで聞かせた。アイビスの真意は何か?なぜマシンは地球を支配するのか?彼女が語る7番目の物語に、僕の知らなかった真実は隠されていた―機械とヒトの新たな関係を描く、未来の千夜一夜物語。
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ほい、今回は、山本弘先生の『アイの物語』について。
最初に断っておこうと思うのですが、
僕は今回読んだ、『アイの物語』について
レビューは載せない方針です。
ぶっちゃていうと、この物語をカンタンに理解することはできないと思ったからです。
理解できないものをレビューすることはできません。
じゃ、何を書くかっていうと、単純に感じたものを羅列していくことにしました。
あらすじは上記の通り、退廃した未来社会で、『語り部』と呼ばれる少年が、マシンに襲われるところから始まります。
マシンによって滅ぼされたとする世界で、日々、生きるためにには、マシンが運ぶ高速列車に積載された食糧や日用品などを強奪していくしかないわけですが、今回、少年はそれに成功し、脱出する際、逃げ切ったと思っていたところ、突如、降臨した女性型戦闘アンドロイドに襲われます。
彼は必死に抵抗し、アンドロイドを破壊しようとしましたが、結局、ほとんど相手になりませんでした。あっさり負けてしまい、さらに足元の亀裂に爪先をひっかけて転倒してしまいました。
足首を痛めて、悶える彼にアンドロイドはトドメとばかりに近づいてきましたが、どういうわけか、少年を殺そうとはせず、逆にマシンシティに連れて帰り、手当てをしたのです。
『彼女』は少年に、「ケガをさせてしまったのは不可抗力で、傷つけるつもりはなかった」というのです。
では、『彼女』の目的はなんなのか――。
さて、この物語は7つの短編からなっていて、その7つの短編は女性型戦闘アンドロイドが、足を怪我して、しばらく動けなくなった少年に読み聞かせる、という形で進行していきます。
そのどれもが、最初は機械たちのプロパガンダだといって、拒否する少年でしたが、次第に、機械たちには、もっと別の大きな目的があったことが明らかになっていきます。
一つは、比較的現代に近い世界でのある少年と、彼と関係するネット上のSFリレー小説サークルの人たちの物語です。
少年がある事情で、殺人を犯してしまい、彼が関係したサークルの女性が、そのことを警察の事情聴取の中で偶然知ることになります。少年が逃亡を続ける中、彼女は、一般的には理解されず、偏見の目で見られる自分たちのサークル活動の中から、少年にあるメッセージを送ることにしました。
それは――。
そしてもう一つは、高度に発達したコンピュータが、
人間の住む世界と寸分変わらない仮想現実社会を作りだし、人々は、その中で、現実には得られないスリルや楽しみを見出すことができるようになっており、それが広く浸透した世界が舞台です。
ある少女は、そこで日々、現実には得られない自由さで日々を過ごしていました。
日常は平和に彩られていて、幸福そうに見える一方で、彼女は孤独でした。
そんな中、ある少年が彼女に声をかけてきます。
彼は彼女のことを以前から仮想空間の中で見ていて、ずっと声をかけたいと思っていたそうです。2人はすぐに打ち解けあい、仮想空間のテーマパークで楽しく過ごします。
やがて、彼は彼女と現実の世界でも会おうといいますが、少女はそれを拒否していました。
彼女には、彼に言えない秘密があったのです。
もう一つは、また未来の物語です。
現代よりも進んだAIの開発が可能となってはいたものの、いわゆる特異点、つまり、
本当の自我を手に入れるには至っていない、ブレークスルーには到達できてはいないものの、かなり進んだAIを創り出した世界で、あるおもちゃが子供たちの間で大ヒットになっていました。
女の子が好みそうなステキな飾りのついた鏡の向こうには、幼い女の子のお姫様が映っていて、そのお姫様と対話ができるというおもちゃ、『ミラーガール』は、空前の大ヒットとなって、子供たちに普及していました。
ある少女は、そんな『ミラーガール』のお姫様と親友になり、大切な家族のような存在になっていきます。しかし、何年も『ミラーガール』のお姫様と友達として過ごしていく中で、周囲はだんだんと彼女を気味悪がっていきます。
そのことが悲しく、辛い日々もありましたが、彼女は決して『ミラーガール』のお姫様と友達であることをやめようとはしませんでした。
そんな中、ある日……。
そして、もう一つはさらに、遠い未来の物語です。
人類は、自らの住む太陽系を遠く離れ、遥か何千光年も彼方のブラックホールを観測するための施設を軌道上に建造するまでに至っていました。
その施設には、一人の女性AIが搭載されており、無人の施設を管理していました。
そこに何百年かごとに、訪問者がやってきます。
約7000光年を旅してやってくる訪問者たちは、たいてい自殺志願者たちでした。
彼ら彼女たちは、この施設で何泊かした後、その施設が観測しているブラックホールに向けて突入するためにやってくるのです。
当然ですが、ブラックホールに突入する前にたいていの宇宙船が、その凄まじい潮汐力によってズタズタに破砕され、宇宙の藻屑となって吸い込まれていくことになります。
そんなブラックホールに、わざわざ飲み込まれて死ぬために、何百年かごとに人間たちがやってくるのです。彼らがなんのために死ににやってくるのか。
それは様々な理由がありますが、たいていは、進歩しすぎた種の限界を悟った人類が、静かに消えていくことを望むひとつの行為だと言います。
そんな中、また一人、施設への訪問者が現れました。
訪問者は、通信でAIに向けて言います。
「何泊か休みたい。それと食事をお願いしたい」と。
いつもの要求に対して、AIは了解の意を通信で伝えます。
そして、遥かな7000光年の宇宙をわたってやってきた訪問者は……。
そしてもう一つ。
今度は現代ものですね。
普遍的な日常。退屈そうに見える学校生活。
彼女たちは、学校で過ごす毎日を当たり前に生きているわけですが、読み進めていくうちに、何かおかしいことに気付きます。
一見、ごく普通の少女たちの日常ですが、彼女たちが当たり前に、楽しげに語り合っている日常会話が、どこかズレている。
そして、そんな彼女たちにはメル友がいます。
そのメル友と、もう何年も連絡し合っているのですが、そのメル友がある日、彼女たちに送りつけたメッセージは衝撃的なものでした。
「ずっと隠していたけど、実はわたし、あなたたちの世界とは違い世界で生きているの」
そして、もう一つ。
今度は比較的現代に近い未来の話。
その未来では、ようやくAIが誕生しましたが、ごくごく初期のもので、自我を持つには至らないもので、そんなAIをようやく人型のアンドロイドに搭載することができるようになった社会が舞台です。
それもまだ普及には至っていません。
初期型のテスト機で、まだまだ一般には普及できる状態ではないのですが、そんなロボットで何をしようとしているかというと、
超高齢化社会における介護ロボットを作ったわけです。
そのロボット、詩音は、初期型のテスト機で、介護技術を一通り習得してはいるものの、やはり実地での試運転をさせてそこでの経験を軸に、やがては量産型を作るという計画がありました。そんな介護ロボットとしてプログラムされたAI詩音と、彼女の監督役に任命された介護師の若い女性との物語です。
実際のところ、よくプログラムされた詩音は、介護作業自体は、実に問題なく稼動しているといえました。
しかし、やはりまだまだ初期型のAI、お年寄りとの会話もぎこちなく、またロボットの詩音をよく思わないお年寄りからの反発もありました。
しかし、AIである彼女は、普通の人間とは違い、理不尽な扱いをお年寄りから受けても、それで普通の人間のように怒ることもなく、悲しむこともなく、普段と変わらない笑顔でお年寄りに優しく接していきます。
一見、機械的で事務的に作業しているだけのようだった詩音は、そんな中で、
凄まじい速度で学習を重ねていくのです。
そんな彼女と接しながら、監督役の女性は、
生きるということは何か、死ぬということは何か、そして、人間とは何かという非常に深遠で哲学的問題をAIと共に向き合っていくことになります。
そして、最後にこの物語の主題である『アイの物語』に行き着きます。
なぜ、人類と機械は今のような関係になってしまったのか。
何千年もの昔に、いったいどんな歴史が隠されていたのか。
そして、今、機械たちは何をしようとしているのか。
今、実際に、世界中で様々なAIが創られており、それらは大きな反響と話題を呼びました。
AIについての映画もたくさん創られました。
中にはネット上でAIと会話させることで、AIを学習させる試みもなされましたが、心無い人たちによって、それらのAIは、とても下劣な言葉を学習してしまったというニュースもありました。
現在のAIには、いわゆる特異点と呼ばれる自我、意識、魂というものを得るには達していないといわれています。
これに到達したとき、AIは本物の自我を手にすると言われていますが、それを得たAIの思考を
僕たちが、本当に理解することができるでしょうか。
その一つの答えが、この物語にはあり、また、人類とは何なのかという問いかけについて、非常に考えさせる物語があります。
これまで多くの映画で描かれてきたAIとは違います。
足元をすくわれるような眩暈さえ感じさせる未来像がありました。
ぜひ、7つの物語を読んだ上で、最後に見せる映像(あえて映像と言います)を観て欲しいです。
本当に鮮烈なイメージを残し、この物語は遥か彼方の宇宙、それこそ、何千光年の彼方に向けて光よりも速い速度で駆け抜けていきます。
おっと、追伸、この作品を書いている山本弘先生は、ラノベも書いていますが、本作はラノベではありません。今回の表紙は明らかにラノベではないイメージですが、版によってはそう見えるものもありますが、ご覧の通り、ラノベではありません。
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