6月の失業率が前月に対し0.1ポイント減の3.7%に改善したことが報じられました。 (07/31)とは言え、首都圏以外の地域ではそんな実感はないので、この失業率という数字は株式市場上のデータにしか使えないんじゃないかと思ったりします。

さて、最近人材派遣の大手企業が芋ずる式に厚生労働省からの摘発を受けています。小さな違反はこれまでもあったのでしょうが、グッドウィルのコムスン事件、違法天引き問題に端を発し、ここにきて急激に業界他社へ広がりを見せています。これには内部告発による指摘があるのだと思いますが、ここ一週間内のニュースは次のようなものです。

<グッドウィル違法残業・・・労使協定期限切れの状態で>(725)

 グッドウィル・グループの人材派遣会社「グッドウィル」(東京都港区)が、残業のルールを定める労使協定の結び方が不適切だとして厚生労働省から再締結するよう指導を受けたものの、その後の手続きの遅れで、今月から一部の事業所で協定のない状態になっていることがわかった。

 こうした事業所の中には、(労使)協定のない状態で従来通り社員や派遣スタッフが残業しているケースもあり、労働基準法違反の疑いが出ている。同社を巡っては、二重派遣など他の労働法令違反の疑いも浮上しており、厚労省は、本格調査に乗り出す方針を固めた。

 厚労省から不適切と指導を受けた労使協定は、労働基準法36条に基づいて残業の許容範囲を労使間で決め、過剰な残業に歯止めをかける目的で締結されたもので、一般には「三六協定」と呼ばれる。


<フルキャスト全事業所、過去最長の1カ月事業停止命令>(83)

厚生労働省東京労働局は3日、人材派遣大手のフルキャスト(東京都渋谷区)に対し、労働者派遣法で禁止されている港湾荷役業務に労働者を派遣したとして、派遣事業停止命令を出した。停止期間は8月10日からで、違法派遣をした神戸市の3事業所は2カ月、残る全事業所(6月末で313カ所)は1カ月。全事業所の停止1カ月は、大手で過去最長となる。3月に禁止業務への派遣で事業改善命令を受けたのに、違反を繰り返したことを悪質と判断した。


 停止期間中は新たな派遣ができなくなり、1日に約1万2000人いるフルキャストの日雇い派遣労働者の仕事が失われる可能性が高い。東京労働局は、停止処分の開始日まで1週間の猶予をもたせることで、同社にほかの人材派遣会社への紹介や派遣先への直接雇用を促し、雇用の安定を図る。

<スタッフサービス系の会社が契約書を偽造し、派遣を継続>(86)

 人材派遣最大手の「スタッフサービスグループ」(東京)の傘下会社が、熊本県内の電子部品製造工場で働く数十人の派遣労働者の派遣契約書を偽造し、違法に長く同じ業務に就かせていたことが朝日新聞の調べでわかった。同社は工場側と示し合わせ、派遣期間満了を迎えた数十人が新たに別の業務に就いたように装っていた。労働者派遣法は製造業務への派遣について当時最長1年と定めており、熊本労働局は6日に同工場などを立ち入り検査する。


 傘下会社と同工場をめぐっては、熊本労働局が05年秋までに、実態は派遣なのに業務請負契約の形を取る「偽装請負」と指摘。両者は契約形態を派遣に切り替えたが、期間満了を迎えた労働者への直接雇用申し込み義務を免れるため、別の仕事に就いたように偽装したとみられる。偽装請負が各地で解消されつつある中、こうした「偽装契約」が横行している可能性もある。

上記の問題に関する限り、グッドウィル、スタッフサービスは労働者への不当雇用の問題、フルキャストは労働者の不当派遣ということです。それぞれ違法なのですから、善処される方向に進むでしょう。フルキャストの問題は別の範疇ですが、大手二社はそもそもなんでこんな基本的なことを守れないのでしょうか?激化する競争に勝ち抜くためにコストダウンをこんな形で図らざるを得なかったのでしょうか?経営者の資質が問われるところです。


グッドウィルは、折口雅博 (1961 生まれ)さんが1995年に創業し2004年に現会社が設立されました。折口さんについては著書も読ませてもらいましたので、だいたいわかります。

フルキャストは、平野岳史 (1961年生まれ)さんが1990 に設立しています。平野さんはよくテレビに出てこられますし、そのプロフィールも知っています。

スタッフサービスは、グループ代表の岡野保次郎 (1951年生まれ)さんが1981 京都市内で創業したそうですが、岡野さん自体がどんな方なのかよくわかりませんでした。

人材派遣業も淘汰の時代に入っています。せっかくの事業で、こんな基本的なルールを疎かにして経営を悪化させる経営者は自業自得です。雨降って地固まる式に建て直しして欲しいところです。

ところで、国民の問い合わせが殺到して臨時でオペレーターを採用した「厚生労働省」の社会保険庁や、郵政民有化の一環で公社内外からの問い合わせ担当を臨時職員に委ねる日本郵政公社も、今や人材派遣業のサービスを享受しているのが実情です。まさか、社保庁のスケープゴートとして、この業界を芋ずる式に摘発しているのではないでしょうね?