創香番号〔005〕
最後の1個が
今日旅立ちます
毎回、この瞬間は
なんだか厳かな
気持ちです
誰もに愛される香りも
いいと思うけど
私が創りたいのは
鬱陶しいくらいに
ストーリー性を持たせた
「濃ゆい」香りです
そんな香りだからこそ
受け取ってくださった
お客様の世界へ
新しい風を届けたり
美しくおもしろい
ケミストリーが生まれるのだと
思うから
香りのコンセプトづくりから
イメージをふくらませる作業
創香
ボトル選び
香りを表現する
リリックを書く
包装を考える
リリースするまでのあいだ
その手順のすべてにおいて
新しい香りの世界に
没頭しています
だから
最後の1個を手放すとき
ひとつの儀式を終えるような
榊の枝を
そっと祭壇に置くような
しん
とした心持ちに
なるのでしょう
香りの世界に
没頭しているときの
自分の姿を想うと
まるで巫女のようです
手順こそ祭祀のようには
形式化していないものの
感覚を研ぎ澄ませ
一寸のブレもないように
使用する精油の
たった1滴にも
その意味を考えます
そうやって
少しずつ少しずつ
微調整して出来る香り
だからこそ
自信を持って
お客様のもとへと
送り出すことができます
自画自賛しちゃいますが
私のお客様って
本当にみなさま
たまらなく素敵なのです
直接の面識がない方も
やりとりするメールの
ふとした文言
そのはしばしから
素敵なお人柄が
にじみでています
何よりも
香りという形のないものに
価値をみいだし
おそばに置いてくださること
実際にはその香りを
嗅いでいなくても
私の紡いだ文章と
イメージ写真から
想像力をふくらませて
取り寄せようと
決めてくださる潔さ
自分の感性を
きちんと信じていて
大切に日々を
自分らしく伸びやかに
暮らしている方
だということが分かります
だからね
私はそんな
素晴らしいお客様たちに
ふさわしい創香師で
ありたいと願います
そんな風に思って
仕事ができることは
本当に幸せです
明日はきっといい香り
明日香