勝どき日記

勝どき日記

愛語よく回天の力あり、生きている証を綴る。

●写真は、殿岡駿星著『濱松事件』の表紙カバーです。

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 ◆聾唖者を守る刑法40条は無視された 
  9人殺害、8人負傷の『濱松事件』 
   戦前の濱松市民を恐怖のどん底に◆    
□■□■□■□■□■□■□■□殿岡駿星□■
第839号          2024/09/18  
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◆聾唖者を守る刑法40条は無視された 
  9人殺害、8人負傷の『濱松事件』 
   戦前の濱松市民を恐怖のどん底に◆
  

戦前の濱松市内で聾唖者による連続殺人事件が発生しました。聾唖学校の生徒が、連続5件9人を殺害、8人を負傷させました。事件は、1938年(昭和13)からスタートし、最後の事件は、1942年(昭和17)でした。犯人が捕まったのは、最後の事件で、手がかりになる犯人が覆面に使った布きれで、その持ち主が聾唖学校生とわかり、事件が解決したのですが、それまでは、市民は恐怖のどん底に置かれました。

最初の事件は、芸者の宿泊所でした。若い芸者が殺されたので、芸者のなじみ客ら、水商売関係の男が容疑者ではないか、と警察は殺された芸者と付き合っていた男たちを呼んで調べたのです。

次の事件も、芸者が殺されました。いよいよ、事件は花柳界に関係する男の犯行ではないか、と想像されました。

しかし、第三事件は、農家が襲われました。殺されたのは、女性でなく、農家の若主人でした。鋭い刃物をつかって、胸をひと突きして殺す、手口から、同一犯人と推定しました。

捜査本部が昔の未解決事件を調べると、数年前に、同じような手口で芸者置屋が襲われ、芸者ら2人がけがをした事件があったのです。これも、鋭い刃物で女性を襲っている、事件がいずれも8月の夜に起きている点が似ているので、同一犯人と推定しました。

しかし、事件の犯人らしい人物は見つかりませんでした。そして、最後の事件が1942年8月に発生しました。被害を受けたのは、農家でした。しかし、犯人がいきなり部屋に入ってきて、寝ている人たちを次々刺したのは同じ手口です。主人とその妻、娘さんが刺されて死亡、息子さんが重傷(病院で死亡)を負いました。

濱松署の捜査本部は、お手上げの状態でしたが、殺された妻の枕元に布きれが落ちていたのです。その布きれは、薄汚れていて、この家のものではなさそうでした。別室で寝ていて助かった、娘さんに尋ねると、この布きれは見たことない、というのです。

犯人は初めて、遺留品を残したのです。おそらく覆面に使ったのだろう、とその布きれの捜査をしました。そして、布きれの製造元から事件の犯人である、聾唖学校の生徒が容疑者として浮かびました。

濱松署の捜査本部は、それまでに、5件の事件で合計1081人を濱松署に呼んで調べました。もちろん、アリバイがあれば、すぐに釈放しましたが、そうでない、かなり怪しいとにらんだ、41人は別件容疑で逮捕しました。長期間勾留して「お前が犯人なのは分かっている。自白したら家に帰してやるから、はやく自白しろ、自白しないなら、拷問にかけるぞ」などと、脅して自白を迫りました。袴田事件と同じで、自白偏重の取り調べは日本の伝統です。

しかし、いすれも、犯人ではなかったのです。ところが、布きれから浮かんだ、聾唖学校の18歳の生徒は、成績優秀で、トップクラスでした。毎日、遠州鉄道に乗って、濱松の聾唖学校へ通っていました。遅刻も欠席もなく、学校では評判のいい生徒でした。

聾唖少年を取り調べて動機を聞くと、「父親から聾唖者は学校へ行かなくていい。学校をやめて、農作業を手伝え、といわれたので、自分の力で学費を稼ごうと、強盗に入った」といったのです。少年は「どうしても学校へ行く」というと、父親は「弁当は持たせない」といい、弁当を持たないで学校へ行くこともありました。

聾唖少年は自宅で鶏を飼って、卵を売って学費を稼いだりしていましたが、学用品も買えず、どうしても学費が足らず、5件の強盗で、9人も殺し、8人もけがを負わせたのでした。

当時の刑法40条では、「聾唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス」という法律がありました。弁護側は、耳鼻科医師の「聾唖者である」という判断と、心理学者による「聾唖による精神的な耗弱であった」という判断を検察側に訴えました。

しかし、検事も裁判官も、少年の耳は正常であり聾唖ではない、と判断したのです。詳細は、小説の中で説明しておりますが、耳が正常なら、なぜ少年は聾唖学校へ通っていたのでしょうか。父親から「聾唖者は学校へ行かなくていい」といわれたのでしょうか。

刑法40条は、聾唖者だけを特別扱いしているという考えから、戦後、1995年(平成7)に廃止されました。しかし、当時は立派な法律として存在していたのです。ところが、裁判になると、検事も裁判官も、この法律は無視して、死刑を求刑、判決としました。刑法40条の聾唖者を守る法律は何のためにあったのでしょうか。

聾唖少年は処刑されました。わたしは、戦前の事件とはいいながら、刑法40条を適用しなかった、裁判を非常に残念に思いました。

 

◆殿岡駿星の著作『濱松事件』を題材にした、映画『濱松聾唖連
続殺人事件〜オレは父に殺された〜』(脚本・監督・編集:大石未羽)

がユーチューブで流され、評判になっています。

◆映画「濱松聾唖連続殺人事件〜オレは父に殺された〜」
https://www.youtube.com/watch?v=grYRUTeKj3I


また、映画化してくれた監督の大石未羽さん、プロジューサーの
千々岩恵子さん、出演者の宮腰翔さん、川島琉武さん、手話通訳
の井本麻衣子さんら8人が、勝どき書房の「橋本夢道資料室」に
来てくれて、わたしにインタビューをしてくれました。

◆映画「殿岡駿星氏にインタビュー」
https://www.youtube.com/watch?v=Wt6_O8aFMlQ

映像は41分間、わたしが、逮捕された聾唖者の犯人は、まだ18
歳の少年で、なぜ、連続殺人を犯したのか。当時、存在した刑法
40条「聾唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス」はなぜ無視
されたのか。聾唖少年の心境や時代背景などを詳しく話しています。

さらに、わたしが話している隣で、監督の大石未羽さんが、ろう通
訳をしてくれました。さらに、わたしが語っている場面で、わかり
やすく日本語字幕を付けてくれました。わたしの話の内容をろう通訳
でも、字幕でも理解できるようになっています。


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◆『濱松事件』     殿岡駿星著・定価2000円・税別
戦時中の濱松で5件、9人死亡8人負傷の連続殺人。市民が恐怖の
どん底に。1983年~1942年に遠州鉄道沿線で発生、犯人は、聴覚
障害の聾唖学校生徒だった。当時の刑法40条では、「聾唖者ノ行
為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス」とあったが、裁判では、聾唖で
ある事実が無視され、しかも逮捕時18歳の少年だったのに、死刑
判決、処刑された。殺人の動機は、父親が「聾唖の子は勉強す
るな、学校をやめろ」といって学費を与えないため、学費を稼ごう
と強盗に入ったためだった。当時、新聞記者だった著者の父親のノ
ートをもとに、著者が生まれた当時、80年前の事件の真実を追究。
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この本『濱松事件』を割り引きで直売します。
連絡はメールでご連絡を。 syunsei777@yahoo.co.jp
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◆このコラムは写真付きで下記のブログに転載しています。
「勝どき日記」  https://ameblo.jp/ashashio10ri10n  
 「コラムゆりかもめ」は随時発信となっています。
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◆「自由俳句の会」季語や、575のリズムにこだわらない自由な
俳句作りを楽しむ会です。自由律俳句とは違って、季語、575で
もOKです。年に6回、偶数月の第2土曜日までにメールで1人
5句以内投句。その後、投句者全員に無記名・ランダムで俳句一
覧を送信します。会員はその中から好きな4句と自選の1句を選
句します。選句結果から、金銀銅賞、特別賞として自由俳人賞
(5句合計最多得点)、サイクルヒット賞(5句すべて入選)など
を選び、メールと、ブログ「自由俳句の会」で報告します。
 https://blog.goo.ne.jp/jiyuuhaiku
その後、受賞者のことばと、会員の鑑賞文を含めて、句会のまと
めをブログで全国の俳句ファンに報告します。また、橋本夢道の
句を研究課題として鑑賞をし、ブログで発表します。第33回は
2024年10月1日から投句受け付け。年会費は1000円です。
参加申し込みはメールで。 syunsei777@yahoo.co.jp へ。
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◆『橋本夢道物語  妻よおまえはなぜこんなに可愛いんだろうね』
            殿岡駿星著・定価1900円・税別
自由律俳人の橋本夢道は<渡満部隊をぶち込んでぐっとのめり出し
た動輪><子ら問う巡査がなぜこんなに従いゆくメーデーなの>
などの反戦自由律俳句を作っていたため、1941年2月、特高に治
安維持法違反容疑で逮捕された。同時に「京大俳句」の関西在住
同人や関東の「俳句生活」などの同人44人が逮捕された。昭和俳
句弾圧事件と言われている。2年余の獄中で<うごけば寒い>
<大戦起るこの日のために獄をたまわる>など約300句を作る。故
郷の徳島、東京月島、妻静子を愛し反骨とユーモアで生き抜いた生涯。
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◆『橋本夢道の獄中句・戦中日記 
   大戦起るこの日のために獄をたまわる』
              殿岡駿星編著・定価 2000円税別
2012年から、勝どき書房で奇数月の第二土曜日に「夢道サロン」
を開催するようになり、そのメンバーから、夢道の獄中句「大戦
起るこの日のために獄をたまわる」など300句をまとめて本にし
たら、という意見が出た。最近見つかった夢道の戦中日記も加え、
メンバー8人のエッセイも掲載し、「橋本夢道物語」に次ぐ夢道
を紹介する2冊目の本となった。このメンバーが中心となって
「自由俳句の会」が結成され、偶数月にメールによる句会が続け
られ、句会に集まる必要がないので会員は全国にいる。
「勝どき書房」の本を特別に割り引き販売をします。購入希望
の場合は、メールで syunsei777@yahoo.co.jp へ連絡ください。
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◆『狭山事件 50年目の心理分析』
            殿岡駿星著・定価3200円税別
1963年5月1日、埼玉県狭山市で発生した女子高校生誘拐
殺人事件(狭山事件)は、石川一雄さんが犯人とされていま
すが、石川さんは無実を訴え、再審開始を求めて闘っています。
著者はこれまでに石川さんの無実を証明するために「犯人 狭山事
件より」(晩聲社)を上梓していますが、その後、ブログに連載し
た「狭山事件・取材ノート」を土台に家族の証言などを心理的に
分析し事件を推理しました。石川さんが、犯人だとしたら、なぜ
被害者の自転車に乗って、雨の中を被害者の自宅へ脅迫状を届け
なければならなかったのか。電話でいいじゃないですか。しかも、
石川さんは、その自転車を被害者宅に返却して、雨の中をトボトボ
と4キロも自宅まで歩いたというのです。これは真犯人がしかけた
罠としかいいようがありません。刻々と真犯人に迫ります。
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◆『三億円事件の真犯人』
        殿岡駿星著・定価1700円・税別
1968年12月10日に発生した、府中三億円事件から40年、
真相を追求していた週刊誌記者上月町子さんは、ついに東武
東上線新宿駅から準急で30分の駅から歩いて40分、埼玉県
西部の農家にたどり着きました。農家の主人は70歳を過ぎた
老人でした。上月記者さんが「三億円事件について話が聴き
たい」というと、老人は「死ぬまで、だれも来ないかと思っ
ていたが、ついに来たか。ここへ来たのは、君が初めてだ」と
いって、住所と氏名を隠すという条件で事件の真相を語った。
老人は「三億円事件は発生の1年前、スカイラインを盗むと
ころからスタートしたんだよ」と話し始めた。
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◆『小さき村なれど -成田の寒村でキリスト教伝道に
        生涯を捧げた元幕臣飯田栄次郎の物語-』
        小松栄三郎著・定価1800円税別
それは、あたかも江戸の中心で起きた幕府の瓦解という激震が
もたらした津波のようなものであったかもしれない。その津波
が、成田の下福田に押し寄せてきて、村を呑み込んでしまった
とも言える。それは徳川幕府が禁じたキリスト教が、幕臣を伝
道者にしてしまうほどのエネルギーを持っていたのである。
(「第一章 幕府の兵卒・農村の教会」から)
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◆『火 みちのく一関忠臣蔵』
         小野寺苓著・定価2000円税別
火は常に胸中に在り、灯りにもなれば、火事にもなる。徳川
幕政下の大事件に遭遇。改易、刃傷、浅野内匠頭の切腹、討
ち入り、苦悩する元禄の一関藩士・牟岐平右衛門、赤穂浪士
・冨森助右衛門、妻るんとの出会い。「本書は忠臣蔵を舞台
に”イエ(家とは、親と子とは何かという根本的命題の提起
にはかならない」(ワシオ・トシヒコの解説から)
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◆『南瓜大玉の日の本國憲法私案』
           南瓜大玉著・定価2000円税別・
南瓜大玉と書いて「かぼちゃだいおう」と読む。東京の玩具会社に
勤めていた著者が定年後、憲法研究に目覚めた。南瓜大玉は、「憲
法試案」を上梓し、日の本に提案する。主な内容は「天皇制廃止・
大統領制・国防軍・地方自衛隊・武器の輸出入を禁止・非正規雇
用の禁止」など。好評となったが、理解できないので説明してほしい
という読者の声が出版社に寄せられる。出版社の依頼で、内容を
説明する講演を頼まれる。南瓜大玉は信州・別所温泉で講演した。
この本は、その温泉旅館で開催された、架空の講演会の記録をま
とめたもの。まじめで楽しい憲法論が展開される。
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◆『響野湾子俳句集 千年の鯨の泪櫻貝』
     響野湾子著・殿岡駿星編・定価2000円・税別
2019年、死刑囚表現展で、死刑囚響野湾子の句<千年の鯨
の泪櫻貝>に感動した殿岡駿星が、響野湾子が逮捕から処刑
までの18年間に獄中で詠んだ俳句、1597句のうち、813句を
選んで句集を編纂した。響野湾子の句は季語や575のリズム
にこだわらない。たとえば11音の<戦争は石の礫>という
句がある。響野湾子は2001年に殺人事件で逮捕され、2006
年から死刑囚展に俳句を発表し、2018年に処刑されるまでの
18年間に多くの本を読み、俳句の勉強をした。他に<枝先
の無きを確かめ蟻もどる><ゆくあての無き鬼もゐて鬼は
外><甚平で彼は消えたり処刑の夜><虹一本飲んで果て
たしああ暗い><一椀に命の果ての湯気の立つ><呼ぶ人
のない道を振り返る><おはようと言える人ゐて暖かし>
<朝顔の藍よりとけて朝が来る>などの句がある。
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◆『こんばんは、毛利小平太です。-霊談忠臣蔵-』
         殿岡駿星著・定価2000円税別
赤穂浪士のひとり、毛利小平太は、最後の脱盟者で、討ち入
り4日前の元禄15年(1702年)12月10日に太夫の大石内
蔵助に参加辞退を表明した。小平太が参加していれば、四七
士でなく、四八士となっていた。長年、忠臣蔵を研究してき
た著者の枕元に、ある夏の夜「こんばんは毛利小平太です」
といって現れた小平太の幽霊がその真相を語った。その後
医師になった小平太は、街医師から仁術の医学を学ぶ。  
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◆『新聞記者はなぜ殺されたのか』
         殿岡駿星著 ・定価2300円税別
朝日新聞阪神支局事件を調べた著者が、犯人の「日本人である」
という脅迫状の嘘を見抜き、舞台をさいたまに移して綴ったパ
ロディー推理小説。事件は、毎朝新聞さいたま支局記者が殺され、
「さいたま困民党」と名乗る組織から「武甲山の自然破壊を許し
た毎朝新聞の記者を断罪した」という内容の犯行声明が届いた。
その脅迫状は嘘と見抜き、深まる謎を追求していく。親友だった
同期の記者が取材し、意外な犯人を見つけ事件の真相に迫る。
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