鴻上尚史が、コラムでこのようなことを言っていた。

 

彼は、人と会う時、いつも「お土産」を持っていくようにしていると。

それは、モノのお土産ではなく、情報のお土産だ。

あの人と会うと、何か得るものがあると思ってもらえることが、

人間関係を維持するコツだと。

 

人間関係を築く上で、

記憶障害はとても大きなネックになるのである。

 

「お土産」と言えるほどの情報でなくても、

「人と話をする」という行為は、基本的に情報の交換だ。

昨日何をしたとか、何を食べたとか、

そんなことも記憶の中から取り出す情報である。

 

認知症の人が、

新しく知人を作れないというのも分かる。

相手のことも覚えていられなければ、

自分のことも話せない。

それでは会話にはならないし、人間関係は成立しない。

 

私は認知症ではないのだけれど、

記憶が曖昧なものが多く、

「それっていつのこと?」とか、

「どこのお店で買ったの?」みたいに

質問されると思い出せずに立ち往生してしまうことが多い。

「えーと、先週だったかな〜」と適当に答えてみたり、

「あー、どこだったっけ…ははは」と顔をひきつらせたり。

 

こんなふうでは人に信頼されず、

友人が増えないのもしょうがない。

 

情報=その人の価値でないのは分かっている。

でも、人間関係を作る上で、

情報というのはとても大切なものなのだ。