iPSを用いたスクリーニングでALSの新薬ができるかも | 医薬翻訳のアスカコーポレーション 社長ブログ

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大阪北浜、東京田町にオフィスを持つ医薬・バイオ分野の語学サービス会社 アスカコーポレーション社長 石岡映子のブログ。

Science Translation Medicine5月24日号に、iPS細胞を用いたスクリーニングにより、ALS(筋萎縮性側索策硬化症)の治療標的分子経路を同定した、という論文が掲載された。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の井上治久先生と今村恵子先生らによる報告だ。

ALSは、運動神経細胞が委縮して、筋力低下を引き起こす疾患で、メカニズムもよくわからず、十分な治療法がない難病である。進行すると、歩行障害、嚥下障害、呼吸障害などが生じ、人工呼吸器をつけなければ2~5年で死亡する。

今回、ALS患者の皮膚細胞からiPS細胞を作製し、その際、CRISPR-Cas9というゲノム編集技術を用いて患者の遺伝子変異を修復したiPSも作製。その後iPS細胞に転写因子を加え、運動ニューロンへと分化させたところ、家族性ALS患者由来運動ニューロンは、健康な方の運動ニューロンや変異を修復した運動ニューロンよりも細胞死を起こしやすい、と。

化合物のスクリーニングの結果、ボスチニブという慢性骨髄性白血病の治療薬が細胞死を抑制することがわかり、今後のALS治療薬の開発につながるという。

今回ASCAはScienceの依頼を受け、京大で行われた記者発表をサポートした。多くの記者が集まり、iPS研究への期待の高さを物語っている。

ここまでわかっても、新薬の開発までには5~10年はかかる、それでも、iPSを使えば10年以内で可能になるなら画期的である。

10年ほど前、ALSの患者団体の、ある地域のトップの方の自宅を訪ねたことがある。寝たままで、瞬きだけのコミュニケーションだ。それでもPCのシステムを開発する人、介護する人など、さまざまな人が彼女の周りを囲っていた。旅行にも行かれるし、多くの人とつながっている。すごい人だと思ったのが忘れられない。

治らないと思っていた病気が治せるようになる、できないことができるようになる。

それこそ私たちの仕事の原点だ。