縁結びの地で通訳翻訳の世界基準を考える | 医薬翻訳のアスカコーポレーション 社長ブログ

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大阪北浜、東京田町にオフィスを持つ医薬・バイオ分野の語学サービス会社 アスカコーポレーション社長 石岡映子のブログ。

ISO/TC 37という通訳・翻訳に関する世界基準を考える第4回目の国際会議が島根県の松江で22日から開催されている。情報科学技術協会がホスト。

http://lang.cs.tut.ac.jp/isotc37/overview/


そもそもISOの基準づくりに関しては日本翻訳連盟(JTF)も積極的に取り組んでおり、昨年のベルリン大会ではJTFから数名が参加し、日本側の主張を訴え、大きな成果につなげている。今回は通訳の話が中心になるとのことだが日本では通訳の業界団体がないので私も日本翻訳連盟(JTF)の理事という立場で参加させていただいた。


朝一番のフライトで出雲空港につき、会場に入ると会議は始まっていた。いきなり通訳機器の世界基準の話である。ブースの温度管理や、遮音など、とても専門的な内容。印象的だったのは、ブースの大きさについて。日本が標準的に使っているブースよりも要求される世界基準は高さも高い。その基準に合わせるとなると、バンで運べないからトラックが必要になるし、何よりも作り直しをしないといけなくなる。海外のブースはとても簡単に組み立てられるものが主流だそうで、早くも日本はピンチである。


午後は通訳のガイドライン作り、各国の実情が飛び交う。Minimal requirement、ethics、contractなど、その話を受けて翌日委員たちが話し合い、再度意見を戦わせる。


当初日本側が懸念していた一つは通訳の時間。日本は15分が標準だが海外は45分らしい。必要な訓練時間も日本は短い。そもそも大学で訓練するのが一般的である海外の状況と、大学を出てから専門の学校で訓練する日本とは違う。文化、言語の違いによるものなので妥協案を画策しようと事前に打ち合わせ済み。ところが始まってみるとかなりpracticalで明快に進んでいく。通訳の形態に関する名称や、犯罪歴などのqualificationなど、各自の意見が飛びかうものの、ファシリテーターが優秀なので、無駄を省いて、効率的なだ。


日本のピンチを救ってくれた立役者はJTFの佐藤理事だ。ベルリン会議から松江会議まで、ずっと一人で根回し、苦労いただいている。私は何の役にも立てないが、彼女が頑張ってくれたおかげであることを再認識した。縁の下の力持ちとはまさに。きっとこの先も問題なく進んでいくに違いない。通訳サービスのガラパゴス化を彼女が救ってくれた。


今回通訳や通訳機器の会社の方が何社か参加してくださっている。それでも通訳者が多く参加する海外の参加者の方たちの積極的な発言には圧倒される。何よりも、責任を持って意見を言える人が参加できていない状況はつらい。


オリンピックだってもうすぐ。これから通訳も世界基準に合わせるために市場は変わっていくに違いない。今回の会議が日本の通訳サービスの変革を生むことを確信する。


出雲空港の呼称は「縁結び空港」、まさに海外と日本の縁結びだ。今回の会議で日本の進むべき道が明確になったことには違いあるまい。


主催者に「なぜ松江ですか?」と聞いてみた。自然がきれいだし、温泉や、神社が素敵、日本人でも来たことがない人が多いに違いない、と。私も松江は大好きだ。宍道湖の夕日は本当に美しい。小泉八雲が愛したこの地で翻訳・通訳の会議が開催されている偶然を嬉しく思う。