スマホで手軽に翻訳! | 医薬翻訳のアスカコーポレーション 社長ブログ

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大阪北浜、東京田町にオフィスを持つ医薬・バイオ分野の語学サービス会社 アスカコーポレーション社長 石岡映子のブログ。

機械翻訳がまた身近になったニュースが18日、朝日新聞に掲載された。
独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)の京都府精華町にある研究所が開発したスマートフォン(多機能携帯電話)向け自動音声翻訳ソフトが人気らしい。
昨年から無料で公開され、ダウンロードは50万件、関西経済連合会のベトナム訪問に合わせて現地の政府幹部に技術を披露するという。

「道に迷いました。駅はどこですか」。
スマートフォンに話しかけ、数秒待つと英訳が。NICTの音声翻訳ソフト「ボイストラ」は昨年末に発表された。
この機械翻訳は25年前ほどから開発が始まり世界各地の言語の文例や、音声会話のデータベースをネットで参照し、最適な翻訳を音声で出す。
まずは観光に特化し、日英中韓の4カ国語の間では旅行会話なら正解率が9割前後とほぼ実用化レベル。関心を示した3社と近く事業化契約を結ぶという。
ベトナム語やインドネシア語も開発中。現地ではベトナム語の音声会話の収集で協力を呼びかける。
http://www.nict.go.jp/press/2011/04/25-1.html


観光での表現が中心だが、日英中韓4ヶ国語の正解率が9割だというからすごい。
人間だってそれくらいは間違えるだろうからその技術の高さは評価できる。

私がサラリーマン時代、機械翻訳のプロジェクトが社内でフィーバーしていた(25年ほど前)。お役所、大学、民間企業などが、世界をリードし、言語解析をビジネスにしようと躍起になってた。
国の莫大な予算が使われていた。別部署にいた私だったが、機械翻訳騒動には巻き込まれた。
通訳ソフトのデータベースを作るの会社の仕事とひとつで、私たちが総動員で協力した。
よく覚えている。国際会議への参加を国際電話でできるように、というシュミレーションだ。
会社のNativeスタッフ(日本語から英語への通訳ができる)とタイピストと私が、パソコンとマイクのそばに座る。そこに原稿が手渡され、
「国際会議に参加したいのですが、今からでも登録は可能ですか?」
「ホテルの予約をしたいのですが」
「懇親会にも出席したいのですが」などなどのようなフレーズを私がぼそぼそ吹き込む。
それをNativeスタッフが英語で置き換え、録音し、タイピストが入力するのだ。
あらゆる社員、スタッフを使ってそうした作業が何千回と繰り返された。

辞書作りってすごい、と感激した。


その後の仕事のことは聞かされていなかったが、この「ボイストラ」の誕生にかかわっていたにちがいない。
四半世紀前のことだ、そう思うと考え深い。
私がかかわった昔はきっと5割程度の出来で、それを実用化と言われる9割の正解率を生むのに25年もかかったのだ。

今の技術の進歩は本当に早い。昨日の技術がもう明日にはできている、という感さえある。

でも、言語だけは簡単にいかないのだろう。

私たち翻訳会社が今まだ存続するゆえんは、言語に潜む文化と個性を翻訳するには人間の手にゆだねるしかないからだ。
日本がどんどん個性的になり、英語ですら画一的でない。


翻訳納品物の”日本語が読みにくい”と説教されることも多い。
意訳してもリスクがあるし、どうしたものかと頭が痛い。
「たまには簡単な文書の翻訳をさせてください」って頼んでみたら
「英語がよければ機械翻訳にかければすみます」
「内容が簡単なら翻訳なんて頼みません」


ぴしっと。
ごもっとも。
品質への要求は高まり、翻訳費は下がる。
機会やソフトにかける開発費を少しは私たちに回してほしい、というのは筋違い?