この数年、当院なりにデジタルサイネージに取り組んできた。特に初診時の患者さんに向けてである。
しかし現在は、あえて限定的な活用にとどめている。
確かに、動画や音声などの動的なコンテンツは訴求力が高く、人の目を引きやすい。だが、それがそのまま「心に響く」ことと一致するかと言えば、必ずしもそうではないと患者との温度差を感じるようになった。
特に痛みを抱えて来院される患者さんの場合、「治してほしい」という言葉の裏にある思いは実にさまざまだ。
そもそも自分自身が何を求めているのか、本人が一番わかっていないケースも少なくない。
ネットやAIが当たり前に活用される今、学校の授業で聞くような話や、本に載っている知識は、もはや誰でも簡単に手に入る情報になった。
「最新」とされる情報でさえ、来院前にすでに患者さん自身が調べ、知っていることも珍しくない。
たとえば、喧嘩をして怪我をしたとしよう。
殴られた、蹴られた、どちらが先に手を出した――それらは「起こった事象」に過ぎない。
本当に重要なのは、「なぜその喧嘩が起こったのか」という過程である。
その過程を伝え、理解してもらうためには、デジタルサイネージは非常に有効な手段だ。
これが、この数年の試行錯誤を経て小生が辿り着いた、現時点での結論である。
病院や治療院に限らず、どの業種、どの店であっても、
「人がそこを訪れるために、本当に必要な情報は何なのか」
今一度、自分自身と向き合って考える必要があるのではないだろうか。
本には載っていない何かを、ぜひ手に入れてもらいたい。
