今年6月に死去した米作家、ダニエル・キイスさん(享年86)の遺作と向き合う俳優がいる。キイスさんの小説『アルジャーノンに花束を』のミュージカル版(平成18年)で主演した浦井健治(33)だ。この演技などで第31回菊田一夫演劇賞を受賞。18日から再演するミュージカルでも主演を務める。浦井は「セリフの一字一句を、より大事にしてキイスさんに敬意を表したい」という。(竹中文)
キイスさんは1959年に発表した中編『アルジャーノン-』でヒューゴー賞を受賞。これを長編化した作品でもネビュラ賞を獲得して脚光を浴びた。キイスさんの作品では『五番目のサリー』『24人のビリー・ミリガン』など話題作もあるが、『アルジャーノン-』の人気は圧倒的だ。出版した早川書房によると、日本国内だけでも累計320万部以上を発行し、大ヒット。米仏などで映画化され、日本国内では平成2年に「劇団昴(すばる)」により初演された。14年にフジテレビ系でドラマも放映され、24年に「演劇集団キャラメルボックス」による舞台版も上演されるなど人気はとどまることを知らない。
その人気の理由について、18年と24年のミュージカル(荻田浩一演出)で主人公のチャーリィ・ゴードンに起用された浦井は「残酷な現実を突きつけつつも、根底に温かい人間愛を感じさせる作品だから」と語る。