震災後…現実を直視する作家 生と死の循環・自然と向き合う | 毎日のニュース

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 東日本大震災から今日で3年半。未曽有の災害の衝撃は、いまだアーティストの心に深く刻まれている。世代やジャンルを超えて、3・11を契機に作品にさまざまな変化が見え始めた。そこには現実を直視した作家たちの姿がある。(渋沢和彦)

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 昭和35年、20歳のとき、前衛的なグループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」に参加して華々しく活躍し、現在も旺盛な制作を続けている美術家、吉野辰海(74)。

 平成21年から、少女の胴体に犬と象の頭部をつけた不思議な立体作品「象少女」シリーズを手がけている。FRP(繊維強化プラスチック)に油彩で着色したカラフルでポップな作品だ。しかし、3・11後の23年6月、東京・銀座のギャラリーで発表した作品は怖さが顔を出し始めた。犬の頭が突如骨に変わってしまったのだ。

 「福島では原発が爆発。かつて魚釣りをしたり泳いだりした私の故郷(宮城県)の海は津波に襲われた。そうした映像をテレビで見てショックを受け、一瞬思考停止になってしまった」と振り返る。幸い実家は震災の痛手を受けなかったが、深刻に受け止めた。何を表現したらいいのか悩みつつ、1週間後には制作を始めたという。