経済や民間交流の分野に限れば、このところ日中関係の潮目が少し変わった印象を受ける。政治、安保問題で険悪な状況が続いているので、全然安心はできないのだが、閣僚級を含めた官民要人の訪問や、地方レベルでの往来は動き始めた。(フジサンケイビジネスアイ)
中国経済の成長鈍化が確実とみられる中で、冷え込んでいる日中経済を少し動かせないか、というのが北京の思惑だろう。折しも、日本からは経団連の新旧会長が正式交代を控えた5月下旬に訪中した。
中国側の説明によると経団連一行と会談した李源潮国家副主席は、歴史、尖閣問題で原則を繰り返しながらも「日本経済界に両国関係改善への積極的な役割を期待する」と述べた。このところの北京での日本人「冷遇」を思えば、一行が歓迎されたことは間違いない。
小泉政権当時の関係冷え込みで、中国側は「政冷経熱」という策略をとった。政治は冷たくても経済は熱く、という図式には、中国ビジネスに関わる日本企業にもそこそこの支持があったように思う。
いまの習近平政権は、国内政治の比重が高すぎて江沢民時代とは同列に論じにくいのだが、最近の動きはやはり「政冷経熱」の再構築への動きのようにみえる。そこの呼吸は日本側にも伝わって、いわば東京と北京で瀬踏みが始まっているとみてよいだろう。
関係悪化が「一過性」原因でないだけに深刻