『赤毛のアン』の翻訳で知られる村岡花子は、10歳から20歳まで、東洋英和女学校(現・東洋英和女学院)で寄宿生活を送った。カナダ人宣教師によって設立されたミッションスクールである。
▼作文や会話など通常の英語の勉強はもちろん、歴史や地理、比較宗教学なども英語で学んだ。「英学」のほかに、日本語で勉強する「日本学」がある。「よくもあんなに勉強ができた、といまだに不思議に思う」。花子は後に随筆で当時を振り返っている。
▼NHK連続テレビ小説「花子とアン」は今、花子の学生生活の場面が続いている。明治時代になってキリスト教の布教が許されると、欧米の教会から派遣された宣教師たちは、こぞって教育機関を設立して伝道に努めた。信徒の数こそいまだに日本の総人口の1%に満たないものの、女子教育においてキリスト教の果たした役割は大きい。
▼ところが世界には、女性の社会進出はおろか教育の権利さえ認めない、狂信的な集団が存在する。2年前、女子の教育機会を訴えていたパキスタン人少女が、スクールバスで下校途中に銃撃され重傷を負った事件は、記憶に新しい。