【宮家邦彦のWorld Watch】朴大統領の謝罪は何のためか にじみ出る国民性 | 毎日のニュース

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 謝罪になっていない。誠意が足りない。犠牲者に対し直接謝るべきだ。日本政府に対する批判ではない。これら韓国人の声は、ほかでもない朴槿恵(パク・クネ)大統領に向けられたものだ。

 多数の高校生が犠牲となった旅客船「セウォル号」沈没事故について朴大統領は閣議の場で書面を読み上げ次のように述べたという。「対応に不手際があった。事故を予防できず、初動対応も不十分だった。多くの貴重な命を失い、国民に申し訳ない」。さらに、事故原因と対応の遅れが関係省庁の縦割り主義や業界との癒着体質によるものだとしつつ、「これを契機に、官僚社会の改革を強力に推進する」とも語ったそうだ。

 確かに、悲劇に至った経緯を知れば知るほど心が痛む。高校生を持つ親には決してひとごとでないだろう。だが、筆者にはどうしても理解できないことがある。それは朴大統領が謝罪する理由として「事故を予防できなかった」ことを挙げている点だ。

 筆者は朴大統領のファンではないが、こればかりはちょっとひどいと思う。よく考えてみてほしい。韓国にはこの種の海難事故を予防するために海上警察など専門行政機関がある。政府内の対応に不手際があったことは事実だろうが、それは大臣レベルの責任であり、大統領個人の責任ではないだろう。多数の高校生の犠牲を軽んじるつもりは毛頭ないが、大統領はより大きな仕事である韓国全体の繁栄と安全保障にこそ責任を持つべきではないのか。