シーズン前半戦、フィギュアスケート男子の羽生結弦(はにゅうゆづる)(ANA)は世界王者との戦いで辛酸をなめ続けた。世界選手権3連覇中のパトリック・チャン(カナダ)とグランプリ(GP)シリーズの第2戦と5戦で直接対決して連敗。4回転ジャンプが安定を欠いての結果に、関係者は「相手を意識しすぎての自滅。勝てると思っていた自信も粉々に砕かれた」と打ち明ける。
羽生がそこまで意識したのは、ソチ五輪本番を前に、圧倒的な強さを誇るチャンに並ぶ評価を印象付けたかったからだ。23歳のチャンは、初出場で5位だったバンクーバー五輪からの4年間で、めざましい成長を遂げた。
4回転ジャンプの成功率は高く、ショートプログラム(SP)で1本、フリーで2本の計3本を入れたプログラムを世界で勝つためのスタンダードにした。さらに、世界トップレベルのスケーティング技術も武器で、世界歴代最高得点を次々と塗り替えてきた。
米・デトロイトを拠点にタッグを組むのは、異色のパートナー。ニューヨークの名門ジュリアード学院でモダンダンスを学んだ女性コーチのもと、表現力にも磨きをかけている。