続きです。長くなってすみません。
プライド…。
日本の男子フィギュアをもっともっと認められるものにしていきたいという使命感。
そして、自分のスケートに対する揺るぎないプライド。
そのための妥協を許さない、強さと、それに伴う苦しみ。
色々なものを自ら進んで背負ってきました。
それは、大きな喜びと充実感をもたらし、そして、魂をすり減らすような日々だったと思います。
あるとき、彼をずっと見てきた方と、コンディショニングについて色々と話す機会がありました。
同じルーティン、同じ取り組み、同じような本番へのスケジュール、
それでも、ピーキングが同じように来るわけでは無い。
コンディショニングの難しさ、スケートのブレードのように危うい、とても難しいバランス。
それを目の当たりにしました。
理由はあるものの、私には彼がストイックであるが故のテーパリング不足に思えてなりませんでした。
あるとき、その疑問を、立場もわきまえずに彼に投げかけたことがあります。
彼の努力が分かるからこそ、報われてほしいという想いでした。
テーパリングを意識することで、彼のやってきたことが更に花開くのではないかと。
「それじゃ、ダメ!!!!」
強い言葉に遮られました。
「全力で、限界までとことんやりきらないと、誰も感動してくれない!
誰の心も動かせない!
ある程度で、きれいにまとめることはできるかもしれないけど、
でも、それじゃ誰にも響かない!」
強い視線で、一気に吐き出すように語られた言葉に込められた、
スケーターとしての彼のプライド。
「勝てる」「勝てない」ではない。
彼は、自分のすべてを注ぎ込む演技で、訴えかけている。
自分の信じるフィギュアスケートを。
だから私は、彼のスケートにこれほどひかれたんだと思います。
大ちゃんは、とても負けず嫌いで勝負にはこだわりがあります。
でも、彼の根幹にあるのは、自分が魂を乗せられた演技を届け、
観客とコミュニケートとていくことへの喜び。
それがあってこその勝利。
「アスリート」としては、違うのかもしれない。
でも、フィギュアスケートというこの素晴らしいスポーツでは、
彼は、私にとって、最も強く、鮮やかにその煌きを体現してくれる、
素晴らしいスケーターです。
「ありがとうございます。」
いつも、雄弁に語るその瞳で、たくさんの意味のありがとうをくれた大ちゃんに、
今、私から贈りたい言葉はひとつ。
すばらしいたくさんの時間をありがとう!