国立天文台のグラフと同じものを計算で求めてみる。理科の授業でも習うけど当時はしくみが理解できなかった。




一日24時間が日常の常識というのは、腕時計や掛時計で測ればの話。

腕時計や掛時計は電池で動いていて、水晶振動子で一秒を等間隔で刻む。

位置天文学によると、一日の定義には恒星日と太陽日がある。

太陽が南中してから、地球が一回自転すれば再び南中するわけではない。

その間に地球は公転軌道を360/365度だけ進んでいて、

地球から見た太陽の位置が前日とずれているから。

このため自転一回転の周期は24時間より幾分短く、計算すると23.934時間。

これを恒星日という。

恒星日は分かりやすいといえば分かりやすい。

 

太陽の南中ではなく自転一回転を一日とするのだから物理的にもイメージし易い。


なら、太陽の南中で一日を定義しようとすると何か難しい問題でもあるのか。

大いにある。

腕時計や掛時計で測れば一日は24時間。水晶振動子で測るのだから当たり前だ。

 

ところが太陽の南中で測った一日は毎日異なる。

24時間10秒の日もあれば23時間59分40秒の日もある。

このため日の出や日の入も毎日異なり、太陽が出ている時間も毎日異なる。

このように前日の南中から当日の南中で定義した一日を真太陽日といい、

 

腕時計や掛時計で測った一日を平均太陽日という。両者の差を均時差という。

なんでこんな事になるかというと、地軸が公転軸に対し23.4度傾いている事、

地球の公転軌道が真円ではなく太陽を焦点とする楕円になっている事が大きい。


地軸が傾くと、地軸傾斜の影響を黄道上の太陽から受ける方向は夏と冬。

その影響が最大になる方向を夏至点、冬至点といい、冬至点を12月21日とする。

地軸が傾いていない場合の太陽に対し、地軸が傾いた状態で太陽を真南に見るには、黄道上の太陽が夏至、秋分、冬至、春分を除く点では進むか遅れる必要がある。

赤道上の太陽観測点と地球の中心点を結ぶ直線が公転軸に対し傾くと、

 

傾いていない時よりも太陽公転がずれた方向でないと太陽を真南に見れない。

 

それは赤道上の観測点から経線で繋がる北半球と南半球も同様である。

冬至点から春分点までは太陽の南中が平均太陽日より遅れる。

春分点から夏至点までは太陽の公転方向に対する地軸傾斜が逆になり南中が進む。

季節が一巡すると2月と8月に遅れ最大、5月と11月に進み最大のグラフになる。

これが地軸傾斜による均時差となる。


公転軌道が楕円になっている時、ケプラーの第二法則が働く。

地球が太陽に最接近する瞬間に公転速度が最大、最も遠くなると最低速度になる。

フィギュアスケートでは両手を広げると回転が落ち、身体を細めると回転が上がる。

回転運動は摩擦を無視すれば回転数×回転半径が保存される角運動量保存則がある。

したがって公転軌道が楕円だと近日点で最速になる。つまり公転距離が長くなる。

公転半径と公転距離の掛け算が一定になる事から、面積速度一定の法則ともいう。

地球は一年のうちに近日点を一回通過し、遠日点を一回通過する。

近日点を1月1日として計算すると4月に遅れ最大、10月に進み最大のグラフになる。

近日点で公転が最も速ければ平均太陽日を素早く補正して均時差をゼロにできるし、遠日点で公転が最も遅ければ平均太陽日を小刻みに補正して均時差をゼロにできる。この2か所以外ではケプラーの第二法則が比較的弱く、中々太陽を南中させられない。

これが楕円公転軌道による均時差となる。一連の計算の出発点は近日点とし、近日点当日の南中は均時差ゼロとする。


冬至点を12月21日、近日点を1月1日として合成すれば冒頭のグラフが得られる。

よくこんな関係を昔の人は見つけたなーと思う。

南中時刻は毎日少しずつ異なり、これを一年で平均したのが平均太陽日となる。

ということは、腕時計で測った時刻における太陽の位置が毎日異なる事に気付く。

毎日同じ場所、構図、腕時計で測った正午に太陽を一年間撮影し続けると、

その一年で太陽は東西に2往復し、北回帰線と南回帰線との間で南北に1往復する。

すると太陽の軌跡が8の字になる。これをアナレンマという。



ところで均時差があるなら、太陽が出ている時間も毎日異なるのではないか。

朝日の上辺が地平線に一致する瞬間を日の出、夕日の上辺が地平線に一致する瞬間を日の入という。

太陽に対する地軸傾斜角は23.4度を最大として、一年で連続的に変化する。

簡単に考えて、地軸傾斜角を南中時刻で区切って一日のうちは一定だとすれば、

東から西の地平線までの太陽の軌道の距離が毎日異なる様子が計算できる。

9時間ちょっとしか太陽が出ない日もあれば15時間近く出る日もあり、緯度にも依存する。太陽が出ている時間を昼時間と呼ぶ事にする。


昼時間が求まったのなら日の出と日の入も求められないか。

この場合、何らかの基準が必要になる。日の出も日の入もこれから求めるからだ。

基準に使えそうなものといえば均時差、ただし地球上の時刻は経度で異なる。

東に進むと時刻が進み、日付変更線を東に跨ぐと日付が前日になる。

実際は標準時を定め、日本では兵庫県明石市で有名な東経135度の時刻を用いる。

均時差と日本標準時が基準になりそうだが一体どうやって使えばいいのか。

まず計算範囲を日本国内に限定する。すると両端は南鳥島(東経153度)と与那国島(東経123度)になる。

次に均時差を東経135度のものとし、南中時刻を考えると均時差+12で計算できる。

 

均時差がなければ南中時刻は平均太陽日で間違いなく正午12時だからである。

ここまで分かれば後は簡単だ。

 

任意経度で南中時刻を求めるには、東経135度の南中時刻を15[度/時]の時角でシフトすればいいし、任意経度の南中時刻から昼時間の1/2を引けば日の出、昼時間の1/2を足せば日の入りになる。

 

青森県庁の経緯度で計算するとこうなる。



南鳥島と与那国島では均時差が異なる気がするが、東経135度と南鳥島の時差は0.05日、与那国島との時差は0.03日。そして均時差の変化率は最大で28[秒/日]。

多めに見積もって0.05日で均時差がどの程度変化するか求めると0.05×28=1.4秒。たったこれだけなら均時差の経度による誤差は日本国内では十分無視できる。


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古典物理も十分面白い。
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