最初に申し上げますが、

手術や抗がん剤を全面否定するとは思っていません。

当院でも、早期発見に努め早期に病理検査と手術を実施しています。

悪性と判定された場合は、抗癌治療も行ってきました。

しかし、癌の種類によりそれを行うか否かを判別しています。

追求するあまり、手術を幾度となく行い形相も変わったり

また、抗癌治療の副作用での生活の質が格段に落ち食事ができなくなるため

胃瘻設置。長期入院で家に過ごせなくなるなど、

人の医療では、通常行われていることではありますが、

果たして、それが小動物にとって本当に必要なことなのでしょうか?

1例をあげますと、

高齢期に肝臓がんになった子で、腹水も溜まり削痩、手術および抗癌治療も

行いませんでした。たまたま飼い主様の海外出張と重なり、その子も一緒に

行くことになりました。狂犬病ワクチン2回接種、抗体検査、書類も通過し

その間数カ月。腹水などの対症療法だけで無事に渡航されました。気圧の変化やストレスも

心配でしたが、1年後なんと無事に日本に帰って来られました。

海外の獣医師も手術、抗癌治療を選択せず対症療法を行われていました。しかし、癌は消えることも

なく更に大きくなっていましたが、生活の質は落ちていなく腹水も無かったのです。

さらに数カ月治療を行いとうとう終末期となり寝たきりとなりました。

頭もしっかりしていて安らいだベッドで寝ている姿も拝見しました。

最後は、安らかに旅立ったとご挨拶に来ていただきました。

治療方針は、何がこの子に対して適切なのか?を考えて決めています。

治療の選択権は、もちろん飼い主様です。ただ、その手技や治療内容が過去の事例からデメリットであったり

言うまでもなく動物実験では絶対にダメです。

欧米の動物医療では、終末期になる前に今後治療法がないことや動物に苦しみを与えてしまう理由で

安楽死を進めることも実は多く飼い主様を説得します。

しかし、日本では、かわいそうの意識が強く当院では、年間1例あるかないかです。

かわいそうの理由が欧米の方とは考えが違うのでしょうね。