現在、川崎市岡本太郎美術館で開催中の「第27回岡本太郎現代芸術賞展」を観てきました。本賞は「自由な視点と発想で、現代社会に鋭いメッセージを突きつけれる」作家を顕彰するものです。

 色々公募展を観ているのですが、さすが本賞は岡本太郎の名を関するだけあって、突き抜けた作品ばかりでした。あまりに面白かったので、前後編でお届けします。



三角瞳《This is a life.This is our life》

 展示会場に入って真正面にこの作品があるので、結構ドッキリします。

 立方体のガラスケースの中に白い布が何枚も吊り下げられています。その布には、刺繍で描かれた顔、顔、顔。なんともインパクトのある作品です。顔は男女さまざまな人種が混合し、さまざまな表情を浮かべています。

 この作品でさらに驚くのは裏側に回った時です。表側で黒で描かれた顔は裏側は赤い糸で表されているのです。それは私達が血と肉でできていることを否応なく想起させます。たしかにこれは、これこそが私達の生であるといえるでしょう。



 またこの作品を観て思い出すのは、岡本太郎の《マラソン》との類似性です。三角さんがこの作品を意識したかどうかはわかりませんが、岡本さんがまた人の目や顔を描き続けてきたことと通底するように思います。この作品は岡本敏子賞を獲得しました。


つん《今日も「あなぐまち」で生きていく》

 つんさんの作品もインパクト抜群です。小さな箱が組み合わさった団地のような作品です。その小さな箱のひとつひとつの中には、小さなオブジェと小さな絵本が入っています。鑑賞者は自由に絵本を見ることができます。


こんな絵本です。

 ざっと数えてみましたが、小さな箱の数はおよそ600ほどありました。子どもたちがこぞって絵本を取り出して楽しんでいたのが印象的でした。この作品が岡本太郎賞を得ています。



タツルハタヤマ《小鳥のさえずりと聞くとき、遠くで銃声が聞こえた》
 タツルさんの作品は4面が絵画で覆われた作品というかインスタレーションです。そこで描かれているのは複雑な物語です。鑑賞者は靴を抜いで中に入ることができます。身長よりはるかに高い絵画空間に入り込むと、まさにイマーシブな体験ができます。



村上力《學校》
 村上さんの作品はバベルの塔です。人類が神を目指したこの塔は、さまざな書籍で出来ています。その周辺には岡本太郎さんや夏目漱石などの偉人があちこちで佇んでいます。これは人類の智慧のシンボルなのでしょう。

岡本太郎美術館
「第27回岡本太郎現代芸術賞展」は4月14日まで開催中です。
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