2013年よりユニットで活動する岩竹理恵+片岡純也(ともに1982年生)。
その最新展となる神奈川県立近代美術館 鎌倉別館での展覧会、
“岩竹理恵+片岡純也×コレクション 重力と素材のための図鑑”に行ってきました。
展覧会は展示室へと向かう階段から始まっています。
踊り場からガラス越しに見えるのは、
片岡純也さんの新作《ガラス壁による本からの微風》。
マシンに取り付けられた文庫本がガラス壁に当たって、
なんかイイ感じでペラペラペラとめくられていく作品です。
また、階段を上り切った上に展示されていたのは、《やじろぐ枝》という作品。
やじろべえの要領で、枝を先に乗せたペンが、
コップの中をぐるぐるぐると回り続けるという作品です。
このように片岡さんは、日用品や石、枝など身近な素材で、
不思議な動きをし続けるキネティックな作品を制作しています。
「そこに意味はあるんか?」と聞けば、きっと「無いです。」と答えるはず。
意味はないけど、ただ純粋に面白く、永遠とボーっと見ていられる。
そんなキネティックな作品ばかりを発表してきました。
おそらくですが、その制作のベクトルを変えたら、
片岡さんは発明王として、巨万の富を得るような気もします(笑)
さて一方、相棒の岩竹さんは、
片岡さんとは真逆(?)のスタイルで、
主に繊細なコラージュ作品を制作しています。
例えば、こちらの《手紙からの採集》という作品。
手紙に貼られた切手を切り取って、1つに繋げた作品です。
よく見ると、切手の枠の部分だけが、
丁寧に切り残されているのがわかります。
さらによく見ると、消印の枠も切り残されていました。
それら別々の切手の消印を上手く組み合わせ、
綺麗な円になるように配置しているのだそうです。
切り取る作業でも滅入りそうですが、それを配置していく作業も考えると・・・・・。
この1点を作るのに、どれだけの労力がかかるのでしょうか。
と、そんな超絶技巧で制作された作品にもかかわらず、
「超絶技巧でござい!」と決して押しつけがましくないのが、岩竹さんの最大の魅力。
小ネタ(?)を随所に仕込むかのように、
本人が楽しんで作っているのが画面から伝わってくるのです。
その小ネタを探すのにハマってしまうと、
岩竹さんの作品もまた、永遠と観ていられます。
・・・・・と、まだ展示室に入っていないのに。
すっかり紙面を使ってしまいました(汗)
(実際、美術館の取材時でもこの時点で30分ほど時間が経っていました)
ここからはテンポアップしてご紹介いたしましょう。
では、いよいよ展示室へ。
展示室内にももちろん、お二人の作品が多数展示されています。
岩竹さんの細かすぎて伝わらない作品を観て脳が疲れたら・・・・・
頭を空っぽにして楽しめる片岡さんの作品を観てリフレッシュ。
そしたらまた、岩竹さんの作品を観て。
この順番を繰り返すのが、個人的にはオススメです。
さらに、本展ではお二人の作品に加えて、
美術館のコレクション作品も出展されています。
しかも、レアな日本美術の名品を中心に。
それらの中には、現存2点ほどしか確認されてない《歓喜天曼荼羅》や、
約10年ぶりの公開となる鎌倉時代の《両界曼荼羅(胎蔵界・金剛界)》も。
現代アートファンならずとも、日本美術ファン必見の展覧会です。
ちなみに。
“日本美術は古臭くてあまり興味なくて・・・”という方も、ご安心を。
片岡さんの作品がいい感じに中和(?)してくれていますので(笑)。
なお、岩竹さんは代表作の「室内画」シリーズで美術館コレクションとコラボ。
本展のために制作された新作の「室内画」の随所に、
コレクション作品や野外彫刻、美術館の建物の一部が登場していますよ。
ここまででも充分すぎるほどに見ごたえがありますが、
本展のラストには、茶室をイメージしたインスタレーションも!
美術館のコレクションともコラボした唯一無二の茶室でした。
どんな仕掛けが施されているかは、
是非会場でご自身の眼でお確かめください。
近年、「コレクション×現代アート」の展覧会は増えており、
これまでにその手のものを数多く観てきた自負はありますが。
その中でもトップクラスで面白かったです!
というわけで、今日はこの辺で。
片岡さんの作品の動画でお別れいたしましょう。