歌舞伎を描く 秘蔵の浮世絵初公開! | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

静嘉堂文庫美術館で開催中の展覧会、

豊原国周生誕190年 歌舞伎を描く 秘蔵の浮世絵初公開!”に行ってきました。

 

 

 

こちらは、静嘉堂のコレクションの中から、

「役者絵」にスポットを当てて紹介するもので、

近世初期の風俗画の優品とされる《歌舞伎図屏風》を筆頭に、

 

 

 

初期浮世絵から、幕末・明治期までの役者絵の数々が一挙公開されています。

 

 

 

静嘉堂文庫美術館で浮世絵展?

珍しいような気もしますが、それもそのはずで、

出展作の多くが秘蔵されていた作品で、今回初公開となります。

本展の目玉となるのは、静嘉堂を設立した、

三菱第2代社長・岩﨑彌之助の妻、早苗が愛玩したという「錦絵帖」。

おそらく、版元が浮世絵を折帖にして納めたもので、

早苗夫人はこれを個人的に眺めて楽しんでいたようです。

これまで一般公開される機会はなかったため、

ほぼ退色することなく、摺りたて当時の状態を保っています。

そんな貴重な「錦絵帖」を本展では、ビロ~ンと広げた状態で公開。

 

 

 

“本展のために最近作られたものでは?”

と疑ってしまうくらいに、どれも色鮮やかでした。

 

 

 

それに加えて、ほんのりウエットなような。

まるで摺り上がったばかりで、まだ乾ききっていない印象を受けました。

浮世絵に関してはさまざまな美術館で観る機会が多々ありますが、

これほどまでに摺りの状態が美しい浮世絵はほぼ観た記憶がありません。

展覧会名で“歌舞伎に興味ないからなァ…”と、スルーしようとしたそこの貴方!

浮世絵好き、日本美術好きであれば、行かないと後悔するレベルですよ。

星星

 

 

さて、本展の主役といえるのが、今年生誕190年を迎える豊原国周(くにちか)

役者絵の名手で“明治の写楽”とも称された浮世絵師です。

 

 

 

これまであまりフィーチャーされてなかっただけに、

よっぽどエピソードの薄い人物なのだろうと思いきや。

大正14年に著された『浮世絵師伝』では、

その人物像について、「生来任侠にして奇行に富む」と書かれているそう。

奇行って富むものなの?!

しかも、「妻を離別すること 40人以上、転居実に83度」とも紹介されているとか。

あの北斎が生涯で93回の引越しをしているので、

83回の引越しに関しては、まぁそこまでの驚きは無いとして。

40回以上も離婚するって、どういうことよ!

日本の歴代最大記録なのでは?

国周本人がヤバい人であるのは確定として。

そんな10回以上離婚経験のあるヤツと、

一度は結婚を決めた11~40番目の妻も、それなりに変わり者な気がしました。

 

なお本展では、そんな国周の代表作の一つ《梅幸百種》も初公開されています。

 

 

 

梅幸こと五世尾上菊五郎を描いた100枚からなる揃物です。

空摺や雲母摺をはじめ、ありとあらゆる技法が使われているそうで。

まさに贅を凝らした逸品と言えましょう。

 

作品が素晴らしいうえに、キャラも濃い豊原国周。

今年は、川崎浮世絵ギャラリーや太田記念美術館でも、

生誕190年を記念した彼の展覧会が開催中、および開催予定です。

2025年は豊原国周から目が離せません!

 

 

そうそう、2025年に目が離せないといえば、

大河ドラマ『べらぼう』の主役である蔦屋重三郎も。

本展では、ミニコーナー的に蔦屋重三郎関連の作品も展示されていました。

『べらぼう』にガッツリとハマっているので、これは嬉しいサプライズ。

 

 

 

余談ですが。

『べらぼう』にガッツリとハマっていることもあり、

初期の浮世絵を目にした際には、作品そのものよりも。

 

 

 

“あ、鱗形屋孫兵衛(演:片岡愛之助)だ!”

 

と、版元の名前に反応してしまいました。

『べらぼう』のおかげで(せいで?)、

今後浮世絵を観る際には、版元にも注目することになりそうです。

 

 

 ┃会期:2025年1月25日(土)~3月23日(日)

 ┃会場:静嘉堂文庫美術館
 ┃https://www.seikado.or.jp/exhibition/current_exhibition/

 

 

 

 

1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ