こどものみなさまへ みんな なかまよ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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いわさきちひろが亡くなって、ちょうど50年目となる2024年。

ちひろ美術館・東京では、1年を通じ、3つのテーマで、

“こどものみなさまへ”という展覧会が開催されてきました。

そのトリを飾るのが、“みんな なかまよ”

「平和」をテーマにした展覧会です。

 

(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

本展のディレクターを務めるのは、アートユニット・plaplax(プラプラックス)。

「自然」や「あそび」をテーマにしたこれまでの展覧会同様に、

本展のために制作された楽しげな遊具の数々が設置されています。

例えば、タイトルからして楽しげな《スーぽん タン しーん》

 

 

 

ディスプレイの前に置かれた4つの台には、

それぞれ不思議な形の木製のオブジェが置かれています。

 

 

 

それらに触れると、音が鳴るとともに、

ディスプレイにちひろの絵が表れました。

 

 

 

オブジェによって流れる音が違うようで、

また触り方によって音の強弱や長さも変わるよう。

まるで楽器を演奏しているかのような気分になりました。

オブジェは4つあるので、知らない人同士で思いがけずセッションすることも。

その時に奏でられる音楽は、まさに平和のメロディといえましょう。

 

また、こちらも楽しげなタイトルの《だぁ・い!あ!ローグ》という作品も。

 

 

 

丸い巨大なテーブルの縁に、何やら電話の送信機のようなものが付いています。

 

 

 

これに向かって声を出したり、あるいは手拍子など音を出すと・・・・・

 

 

 

その音に反応して、テーブルの表面に、

ちひろ作品の滲みのようなものが表れました。

ちなみに、何人かで同時に音を出すと、それぞれの滲みが反応し合うのだとか。

誰かと一緒にワイワイと、ダイアローグ(対話)を楽しみたいですね。

 

 

さてさて。

「自然」がテーマの展覧会では、生態学を専門とする鷲谷いづみさん、

「あそび」では、発達心理学や発達認知神経科学専門での森口佑介さん、

と、それぞれ美術とは異なる分野の専門家が企画協力していましたが。

本展では、システム工学を専門とする塩瀬隆之さんが全面協力しています。

塩瀬さんは「平和」の研究者というわけではなく、

普段は主に“問い”のデザインについて研究しているそうで。

本展に協力するにあたり、まずこんな問いを考えたそうです。

 

 

 

「平和」の反対と聞いて、ほとんどの人が、

頭に「戦争」を思い浮かべたのではないでしょうか。

確かに、平和と戦争は相反するものですが、

しかし、戦争が無いからといって、平和とは限らないわけで。

平和の反対は戦争で、その反対が平和とは一概に言えない気がします。

・・・・・う~ん、じゃあ、平和って何なのでしょう?

塩瀬さんがデザインした“問い”によって、

改めて、平和について深く考えるきっかけが生まれました。

 

なお、塩瀬さんはこの他にも、

「平和」についての問いを30問ほど作成しています。

 

 

 

どの“問い”も絶妙な設計で、思わず考えたくなるものばかり。

時には、ちひろさんの絵をヒントに、自分なりに答えを出してみました。

 

 

 

ただ、数ある塩瀬さんの“問い”でまだ答えが出せていないのが、こちらの“問い”です。

 

 

 

答えが「人間」ではないことは確かなのですが。

未だにしっくりくる答えが見つかっていません。

イルカかなぁ。

 

なお、塩瀬さんによる“問い”は、

展示室に限らず館内のあちこちに設置されています。

 

 

 

不意打ちのように、問いかけられるのでご注意くださいませ。

 

 

 

さすがにトイレで問いかけられた時は、

「もうええわ!」と心の中でツッコんでしまいました。

これだけは、全然平和じゃなかったです(笑)。

星星

 

 

ちなみに。

本展では、こんなコーナーも。

 

 

 

絵本『ひとりひとり』をフォーカスしたコーナーです。

この絵本は、谷川俊太郎さんの詩『ひとりひとり』に、

いわさきちひろの絵を併せたもので、2020年のコロナ禍に発売されました。

 

 

 

コーナーの最後には、こんな「問い」が待ち受けていました。

 

 

 

谷川さんの詩を味わった後に、

自分なりのを詩を考えてみようだなんて、

なかなかハードルの高い問いかけに関わらず。

たくさんの方が、このチャレンジに挑んでいたのが印象的でした。

そんな数ある回答の中に、意外な人物による回答を発見!

 

 

 

実はこちらは、いわさきちひろ記念事業団の理事長を務める、

山田洋次監督が寅さんに成り代わって書いたものだそうです。

 


 

 

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