2023年の朝ドラの主人公のモデルにもなった植物学者・牧野富太郎博士。
その邸宅の跡地として、昭和33年より、
一般公開されているのが、練馬区立牧野記念庭園です。
博士が「我が植物園」と大切にしたその庭園には、
現在もなお、約300種類ほどの植物類が生育しています。
そして、博士の等身大パネルもあります。
そんな庭園内に、2010年に開館したのが、
内藤廣さん設計による2代目となる記念館です。
その常設展示室には・・・・・
博士の愛用品の数々とともに、
著書に収められた植物画も展示されています。
実はこれらの植物画を描いたのは、博士自身です。
超一流の観察眼で植物を観て、超一流の腕前でその植物の絵を描く。
植物画というジャンルに限定すれば、牧野博士がNo.1といえるのかもしれません。
また、併設された書屋展示室には、
2023年に再現プロジェクトが完成したばかりの・・・・・
94歳でこの世を去った博士の最後の書斎が展示されていました。
その書斎は膨大な書籍で溢れていたそうで・・・。
それも含めて完全に再現されていました。
博士にはまだ遠く及びませんが、それでも、
図録や美術の関連書が日に日に増えていく我が家。
もしかしたら、数十年後はこうなっているのかも?
そんな想像をしたら、思わずゾッとしてしまいました。
さてさて今回、僕が牧野記念庭園を訪れた一番の目的は、
記念館で開催中の“植物たちの声を聴く-岩谷雪子の世界-”を観るため。
現在、神奈川県民ホールで開催されている展覧会、
“眠れよい子よ よい子の眠る/ところ”の出展作家の一人で、
植物を素材に繊細な作品を制作する美術家・岩谷雪子さんの展覧会です。
岩谷さんは毎回必ず展覧会を開催する場所の周辺で植物を採集するそうで。
本展では牧野記念庭園や高知県立牧野植物園など、
博士ゆかりの地で採集した植物で制作された作品が展示されています。
例えば、こちらの作品に使われているのは、スエコザサ。
博士が仙台で発見した新種の笹で、命名する際に、
博士はその頃亡くなった最愛の妻「寿衛(すえ)」の名を付けました。
そのエピソードを知った上で作品を観ると、
ササがそれぞれ、まるで凛とした女性のように感じられます。
正直に言って、あまり植物に興味が無い自分ですが、
岩谷さんの作品を観たら、無性にスエコザサの本物が見たくなりまして。
展覧会後に早速、位置図をもとにスエコザサのもとへ。
すると、そこには・・・・・
牧野博士の胸像を囲むようにスエコザサが生えていました。
なんとも微笑ましい光景ですね。
スエコザサの他にも、ダイコンソウやヨウシュヤマゴボウなど、
岩谷さんの作品を通じて、実物を観てみたくなった植物が多々ありました。
植物の造形の美しさや面白さに気づかされた後には、
実際にその植物が植生している姿を庭園内で観ることもできる。
その上、入館料は無料。
声を大にしてオススメしたいくらいに、とても良質な展覧会でした。
ちなみに。
牧野記念庭園の奥にはキッチンカーがあり、
そちらでは、牧野富太郎ご長寿コーヒーが販売されています。
庭園内の植物を眺めながら飲むコーヒーは格別。
少しだけ寿命が伸びた気がします。