Book:45『イッツ・ダ・ボム』 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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■イッツ・ダ・ボム

 

 作者:井上先斗
 出版社:文藝春秋
 発売日:2024/9/10
 ページ数:208ページ

 

「日本のバンクシー」と耳目を集めるグラフィティライター界の新鋭・ブラックロータス。

公共物を破壊しないスマートな手法で、

鮮やかにメッセージを伝えるこの人物の正体、そして真の思惑とは。

うだつの上がらぬウェブライターは衝撃の事実に辿り着く。【第一部】
20年近くストリートに立っているグラフィティライター・TEEL(テエル)。

ある晩、HEDと名乗る青年と出会う。

彼はイカしたステッカーを街中にボムっていた。

馬が合った二人はともに夜の街に出るようになる。

しかし、HEDは驚愕の“宣戦布告”をTEELに突き付ける。【第二部】

(「BOOK」データベースより)

 

 

「第31回松本清張賞を受賞した話題の一冊。

 ストリートアートを題材にした小説で、

 美術家の大山エンリコイサムさんが帯に寄稿していたのもあり、

 早速、手に取って読んでみることにしました。

 

 タイトルにある“ボム”とは、街にグラフィティを書いたり、

 ステッカーを貼ったりする行為、またはその痕跡を表す用語。

 合法である場合は、ボムとは呼ばれず、

 基本的には、イリーガルに行われるものを指すようです。

 そんな感じで、この小説を読めば、
 知ってるようで知らないストリートアート用語が、するすると頭に入ってきます。

 そういう意味では、ストリートアート初心者に対して、

 入門編のような役割も果たす一冊と言えるかもしれません。

 

 物語の肝となるのは、ブラックロータスの正体。

 彼は一体何者なのか?
 何のためにボムをしているのか?

 もちろん最後まで読めば、それらの謎は明らかになります。

 たぶん・・・いや、絶対違うのでしょうが、

 本家のバンクシーの正体や行動原理も、

 この小説のブラックロータスに近いものだったりして。

 その発想はなかっただけに、なんだかワクワクするものがありました。

 

 普通に考えて、ボムは迷惑行為なわけですが、

 小説の第2部の主人公であるグラフィティライター、

 TEELに関しては、不思議と嫌悪感を抱かなかったです。

 その思想や行動に、妙な説得力があり、
 読み進めるうちに、自然と受け入れている自分がいました。
 テーマが犯罪だけに、地上波では無理でも、
 『地面師たち』のようにNetflixでドラマ化してもいいかも。

 

 ちなみに。

 ストリートアートはアメリカから輸入された文化で、
 小説の中でも当然、そのように紹介されていました。

 ただ、物語のキーの一つとして、

 ステッカーを街中に貼るというボムが登場するのですが、

 よく考えたら、あれはアメリカのストリートアートを真似したのではなく。
 もしや、寺社仏閣に貼ってある千社札がルーツなのでは?
 ということは、アメリカよりも先に日本にはストリートアートが存在していた??

 

 

(参考画像)

 

 

 いつの時代にも、不自分の名前をマーキングしたい人間はいるのですね。
 小説とは直接関係ないですが、
 普段あまりストリートアートについて考えることはないので、

 つい読みながら、いろんなことを想像してしまいました。

 スター スター スター スター ほし(星4)」

 

 

~小説に登場するストリートアート~

 

 

 

 

 

 

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