世界5大東洋学研究図書館の1つに数えられている東洋文庫。
三菱第三代当主である岩崎久彌によって、
1924年に創設され、今年でめでたく100周年を迎えました!
それを記念して、現在、東洋文庫ミュージアムでは、
“知の大冒険―東洋文庫 名品の煌めき―”という展覧会が開催されています。
東洋文庫ミュージアムといえば、
「日本一美しい本棚」とも言われるモリソン書庫。
この3階建てという超巨大な書庫に収められているのが、
東洋文庫が設立されるきっかけとなった「モリソン文庫」です。
モリソン文庫とは、オーストラリア出身の旅行家で、
『タイムズ』の特派員であったジョージ・アーネスト・モリソンが、
個人的に収集した中国を中心としたアジアに関する書籍コレクションの通称。
その数は、なんと約2万4千冊にのぼります。
モリソンの晩年に売りに出され、
岩崎久彌が3万5千ポンドで一括購入しました。
ちなみに、現在の価格に換算すると、約70億円(!)となるそうです。
なお、モリソン文庫は、いつでも観られますが、
本展では特別に、モリソンの蔵書票(※)が展示されていました。
(※自分の蔵書であることを明らかにするために本に貼る紙片のこと)
カンガルーやエミューがデザインされているのは、モリソンがオーストラリア出身だから。
モリソン書庫にある本すべてに、
この蔵書票が貼られていると考えると、
なかなかシュールなものがあります。
さて、モリソン文庫だけでも、約2万4千冊ですが、
それを含めた東洋文庫の蔵書数は現在、約100万冊を超えているそうです。
100周年を記念する本展では、選りすぐりの蔵書の数々を紹介。
それらの中には、国宝の『文選集注』や、
(注:期間は10/28まで。10/30からは国宝の『毛詩』が出展されます)
黄金の国ジパングでお馴染みマルコ・ポーロの『東方見聞録』、
杉田玄白による『解体新書』なども含まれています。
(↑ちなみに、奥に見えているのは元となった『ターヘル・アナトミア』です)
タイムリーなところでは(←?)、
英訳版の『源氏物語』も展示されていました。
“本しか展示されていないのかァ・・・。
文字ばかりをわざわざ観に行くのもなァ・・・”
と、二の足を踏んでいる方も、ご安心を。
本展では、保存状態の良さに定評のある浮世絵や、
歴史の教科書でおなじみの《アヘン戦争図》なども展示されています。
字だけでなく、ビジュアルもちゃんと楽しめる展覧会となっています。
美術ファンに特にオススメしたいのは、ヨアン・ブラウの『大地図帳』。
ヨアン・ブラウは、17世紀オランダで絶大な人気を誇った地図制作者です。
実は、フェルメールの絵画の背景に描かれている地図も、ブラウの世界地図。
そう、彼の名を知らずとも、彼の地図はフェルメール作品で目にしているはずです。
なお、ブラウの『大地図帳』はその貴重さゆえ、市場に出たなら億単位の値が付くとか。
世界一高価な地図を是非、この機会に目に焼き付けておきましょう。
ちなみに。
本展で紹介されていた中で、個人的に一番印象に残っているのが『山海経広注』。
中国の神話や伝説について書かれている書籍です。
開かれたページには、「帝江」なる混沌の神の挿絵が描かれていました。
こんなゆるキャラみたいなヤツが、
世の中の混沌の原因だったのですね!
『ドラゴンボール』でいうところの(←?)、
魔人ブウみたいな存在なのかもしれません。
それからもう一つ印象的だったのが、
広東駐在のフランス領事で東洋史学者でもあった、
ジョゼフ・ド・ギーニュがナポレオンの命で編纂した漢字辞典。
その名も、『ナポレオン辞典』です。
開かれたページには・・・・・
最も画数の多い漢字とされる『テツ(※)』など読めない字がズラリ。
(※『龍』を4つ並べた漢字)
そんな難しい漢字も掲載されているというのに、
ナポレオンの辞書には『不可能』の文字が無いのかよ!