しづかな、平和な、光に満ちた生活!規律ある、限界を知って、自らを棄て去った諦めた生活、それゆゑゆたかに、限りなく富みゆく生活――それを得ることの方が、美しい。そしてそのとき僕が文學者として通用しなくなるのなら、むしろその方をねがふ。コギトたちのあまりにつめたく、愛情のグルントのない文學者の観念を否定すること。コギト的なものからの超克――犀星の『あるところに』という詩をふかくおもひいたれ。

 

立原道造 「長崎ノート」 抜粋

 

 

 

井之頭公園

 

 

 

愛あるところに

 

 

わたしは何を得ることであらう

わたしは必ず愛を得るであらう

その白いむねをつかんで

わたしは永い間語るであらう

どんなに永い間寂しかつたといふことを

しづかに物語り感動するであらう

 

 

          室生犀星(1889.8.1-1962.3.26)