大型連休最終日は、美容院に行った以外は出かけずに

たまったビデオを見ながら片付け仕事。

 

そんな中、NHK日曜美術館「アートシーン」4月21日放送分の録画を見ていて

はっとしました。

 

故・堺屋太一さんご夫妻が建てた美術愛住館(四谷三丁目)が登場したのです。

私がこの美術館を初めて訪れたのが、何を隠そう放送日の4月21日

 

まったくの偶然の一致なのですが、もし録画でなく生で番組を見ていたらさぞ腰を抜かしたことだろうなぁ。

 

 

美術館の開館時間は11時。我々は一番乗りしました。

 

本美術館は1年前に建てられたのですが、その存在を私が知ったのは

つい数か月前のこと。

2月に堺屋さんが亡くなられて暫くしてからのことです。

 

ご存命中には本美術館で堺屋さんご本人のトークを聞くイベントもあったそう。

無知が悔やまれます。

 

展覧会の内容は、奥様で洋画家の池口史子さんの作品や、

氏が携わった博覧会関係の展示などが中心と聞きますが、

今は開館1周年記念で、米国の画家・アンドリュー・ワイエスの

特別展が開催(5/19まで)されています。

 

 

建物正面には奥様の池口史子さんの有名作《ワイン色のセーター》。

ずっしりとした存在感です。

 

解説によると、この場所は、ご夫婦が20年ほど暮らした土地だそう。

「愛住」というのは町名で、所在地は、東京都新宿区愛住町2-5になります。

 

 

 

 

私がワイエスの絵と出会ったのは、2000年かその前だったのではと思います。

 

友人に誘われて行った特設会場でのワイエス展。

といっても原画はごく一部で主に複製で構成されていましたが、

その中で忘れられない一枚が、《クリスティーナの世界》です。

 

本作はニューヨーク近代美術館MoMAにあり、

私が見たのはポスターでしたが、荒涼とした風景の中、

足の悪いクリスティーナが自宅を目指して這って進む姿にくぎ付けになりました。

 

MoMAサイト内のワイエスの「クリスティーナの世界」は==> こちら

 

 

本展では、その「クリスティーナの世界」の素描などが展示され、

ワイエスが彼女の姿に突き動かされた、その軌跡が浮き彫りになります。

 

「クリスティーナの世界」に描き込むため、「手」のみを集中的に描いたデッサン画もありました。

本作は風景の中にクリスティーナが佇む絵ですが、実際はこれが風景画ではなく、肖像画である証と言えましょう。

 

 

クリスティーナとは、ワイエスが暮らした家オルソンハウスの持ち主。

弟とともにつつましく暮らす姿やその風景を画家は描き続けました。

 

美術愛住館に来て初めて、オルソンハウスがワイエスの創作のカギになっていたことに

気づかされました。

 

 

クリスティーナの体はパーツごとに別のモデルから取られているなど、

必ずしも写実ではないのですが、土地に根差した姉弟の魂は

ゆるぎない力で胸にせまります。

 

 

静かだけれど強い磁力のある作風は、

どこか池口史子さんの絵と共通するような気がします。

 

今回ワイエスの絵は、丸沼芸術の森が所有するコレクションから貸与されたもので、

丸沼芸術の森の代表・須崎勝茂代表さんは生前のワイエスから直接

習作などを一括購入されたそうです。

(展示室内で行われた須崎さんのトークから。)

 

 

「日曜美術館」のアートシーンから。

 

 

そして偶然にも、日曜美術館で愛住館のワイエス展が放映された翌日、

同画家の絵「海からの風」が日経新聞で取り上げられました。

 

本画はワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵ですが、

習作が今回の愛住の展覧会にもありました。

 

 

4月21日に愛住館を訪れ、

同日日曜美術館で本展覧会が放映され、

翌日日経に掲載、

掲載された作品の習作は愛住で見たものだった・・・。

 

ワイエスにいざなわれたかのようです。

 

 

この「海からの風」 に描かれているのも、オルソンハウスです。

うっすら模様のついた薄いレースのカーテンが風になびく様子は

心の中を吹き抜けるさまざまな感情をはらんでいるかのよう。

 

それが寂しさなのか、希望なのかよくわからないのですが、

一陣の風が心の中をざわつかせ、すーっと通り過ぎるのを感じます。

  

 

 

美術館脇にはレストラン「ラトラス・フィス」がありますが、

この日は美術館の関係者が多数ご来館されていたせいか満席。

 

 

 

美術館関連レストランといえば、

東京都庭園美術館併設のレストラン デュパルクが割と好きですが、

こちらはそれに劣らず期待できそう。

 

次回リベンジです。

 

 

 

 

 

 

 

美術愛住館HP:http://aizumikan.com/open/