「受胎告知」に込められたもう1つの慶事 ― 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」 その2 | Art and ―アートと私と― 西洋美術たまに日本美術

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主に西洋美術(たまに日本美術)について綴っています。美術展の情報や感想がメインですが、それ以外の記事も徐々に充実させていく予定です。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 その1」の続きです。

 

第1章 イタリア・ルネサンス絵画の収集
では、西洋文化の礎となったイタリア・ルネサンスが
紹介されています。
この美術展では、ボッティチェッリ、ティツィアーノ
などの有名画家に加えて、日本ではまだあまり
知られていない画家の作品も紹介されています。

 

ロンドン_クリヴェッリ
クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」(1486年)

この絵は、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の
図録カバー(表)の1つに使用されています。
図録カバーは、
(表)ゴッホ「ひまわり」/(裏)フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」と
(表)クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」/(裏)ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」の
2種類があります。


正確な遠近法を使って、画面のあらゆる部分が
緻密に描き込まれています。

通常、受胎告知を描いた絵では、マリアと、
お告げを伝える大天使ガブリエルのみが
描かれていることが多いのですが、
この絵には、彼ら以外にも何人もの人が
橋や階段の上などに描かれています。

絵の右下で跪いている女性はマリア、
絵の左下に描かれた、左手に百合の花を持ち、
右手を挙げ、翼の生えた男性は大天使ガブリエルです。
百合は、マリアの象徴としてよく描かれる花ですし、
マリアとガブリエルのポーズは、受胎告知の
伝統に則っています。

則ってはいるのですが……
どう見ても、マリアの家は普通の街角にあり、
周囲と見比べても特に豪華という感じはしません。
階段の上にいる男性(青で囲んでいます)は、
マリアへと到達する光線に気づいているようです。

ロンドン_クリヴェッリ -2
クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」(一部拡大)(1486年)

大天使ガブリエルやマリアに使われている色も
街に溶け込んでいるので、
受胎告知が普通の家の軒先で行われているように見えて、
まるで家庭訪問か訪問販売のような感じを受けます。
受胎告知って、もっと厳かな感じじゃなかったでしょうか。

夢の実現_受胎告知
「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展 その1」でご紹介した、ダ・ヴィンチ「受胎告知」の復元画

 

 

実は、この絵は、イタリアのアスコリ・ピチェーノ市が
教皇から自治権が与えられたという慶事を、
聖書で特に喜ばしい場面の1つである受胎告知と
重ねて描いたものだそうです。

大天使ガブリエルの隣で、街の模型を
持っているのが、アスコリ・ピチェーノ市の
守護聖人である聖エミディウスです。

絵の上部に描かれた鳩は伝書鳩で、
階段の上にいる商人風の人が読んでいる手紙を
運んできたのでしょうか。
その手紙は、アスコリ・ピチェーノ市に
自治権が与えられたことを知らせるものだったのかも
しれません。

ロンドン_クリヴェッリ -1
クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」(一部拡大)(1486年)


「受胎告知」に興味を持たれた方は、
「さまざまな「受胎告知」――『《受胎告知》絵画でみるマリア信仰』」もどうぞ。

 


「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 その3」に続きます。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」のオフィシャルサイトはこちら


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