世界が狭くなった昨今、諸外国へ商用、観光等で出かける時、ほとんどの人が飛行機を利用するであろう。また国内においても本州以遠の九州や北海道へ行く場合も、余程の理由がない限りしかりであろうと思われる。
さて飛行機を利用するときの運賃であるが、今までは国内移動の場合、手厚い政府の保護の下でどの航空会社もほぼ同額の運賃であった。しかし約35年ぶりに新しい会社が参入し、従来の半額運賃で東京と福岡間の運航を開始した。
外国へ行く場合、世界各国の航空会社がしのぎを削りその運賃はチケット販売会社の競争と相まって千差万別である。目的地や時期によっては、従来の日本の国内運賃よりもはるかに安い場合もある。
外国路線の場合、同一航空機でファースト、ビジネス、エコノミー、グループなどの運賃に分かれており、それぞれのクラスにより席の場所が異なる。もちろんファーストクラスが最も高価な運賃となるが、その席は機体の先端部であり、席、足元の広さ、食事、食器などがエコノミークラス等とは異なり、そのクラス専門の客室乗務員が担当する。
次がビジネスクラス、エコノミークラスさらには団体客が多く乗る場所が最後尾というのが一般的である。ちなみにビジネスクラスは、ほとんどファーストクラスに近い待遇でエコノミーや団体客のスペースはやや(orだいぶ)落ちる?と感じられる。
運賃については、距離にもよるがファーストとエコノミークラスを比べてみると、倍以上異なる場合もある。
各クラスの利用者とその雰囲気が結構異なるのも面白い。ファーストクラスの場合、何かよそよそしく隣席の人我関せずで、離陸から着陸まで会話等があまりなく、眠るか読書、映画等自分の世界を創っているように見受けられる。ビジネスクラスの場合、同じ会社の人が商用で出かけたり、中年夫婦が観光旅行で使用する場合が多いのか、少し和やかな雰囲気で隣席同士で語らっている光景を良く目にする。グループエリアでは結構ワイワイ、ガヤガヤあるいはすでに出来上がって赤ら顔で熟睡の人、女性乗務員に声をかけるなど、活気にあふれているというか騒然とした感じがするのは筆者のみであろうか。このようにクラス席により乗客の雰囲気が全く違い、感覚的に機内の会話等による音のレベルが相当に差があるように思われる。
しかしながら、実際に騒音だけで音の測定を行ってみると、エンジン、機体の風切音、室内の換気設備等による騒音で会話音はほとんど測定できない。筆者は航空機が大型化し、低騒音化がさけばれ始めた頃から機会があるごとに機内の騒音を測定してきた。
日本国内においては、すでに使用されなくなっているロッキード「トライスター」(正式にはL1011という)をはじめ、ボーイングジャンボジェット(B-747-200)、さらにはヨーロピアンエアバス(A300)、マグダネルダグラス社製エアバス(DC-10)、B747-400、B-767、B-777、A320などなど、客室乗務員の方に良く説明し、機内の前、中、後席さらにはコクピットの中まで測定させていただいたこともある。
機内の騒音は飛行状況によって大きく異なるものの総じて新型機種になるほど旧型に比べて騒音レベルは小さいが、騒音レベルの分布は、図に示すような傾向を示す。
ファーストクラスが最もレベルが小さく、機体後部ほどレベルが大きい。そのレベル差はファーストとエコノミーで3~4デシベル、グループの使用が多い機体後部とは5~7デシベルほどである。そこでデシベル表示している量を一般の数に直してみると、ファーストとエコノミーで2~2.5倍、同じくファーストと後尾部では3.1~5倍の違いがある。
ここで私達が購入するチケット代、騒音レベルを対応させてみると面白い。例えば東京からニューヨークまでの運賃はファーストクラスで999,900円、エコノミーでは473,900円、ツアーチケットは150,000円程度であり、騒音レベルとほぼ反比例することが判る。機内の待遇に耳から入ってくる騒音も加えるならば、高いお金を出せば騒音は小さいということになろう。但しツンとおつに澄ました雰囲気を好むか、それとも皆とワイワイ、あるいは喧騒の中で過ごした思い出を残しながらの旅を好むか、それを旅客運賃の一部として加えて評価するかは読者の勝手である。
さて、あなたはどちらを?
(一社)日本環境測定分析協会「環境と測定技術」P82-84 環境背景音考(4)Vol.25 No.11 1998
追記
西暦2000年代になり、より低騒音化・低燃費の環境対応型の航空機が運航され始めた。我が国の航空機関連会社も参加し、いろいろな場所に日本の会社の部材が使われ始めた。その代表的なものがボーイング社のB-787シリーズである。B-787は騒音も大幅に低減され、室内での音もより静かになってきている。
上図は筆者が搭乗した機体の、ある席での各飛行形態時の周波数特性と、離陸から着陸までの同席における騒音の時間推移である。これらの測定に関しては日本航空株式会社にもご承諾いただき、さらに広報用の写真も提供していただいた。