【質問】
 
大ブームとなっているマインドフルネスと、唯識の関係について教えて下さい。
 
【回答】
 
唯識は、飛鳥時代に中国から日本に伝来して、唯識に基づいた法相宗が南都六宗の一つとして栄え、多くの僧侶たちによって、学ばれました。
 
鎌倉時代には、法然が浄土宗、親鸞が浄土真宗、日蓮が日蓮宗、道元が曹洞宗を興しましたが、

これらの宗祖は、いずれも唯識を深く学び、その上で自らの信念に基づいて、新しい宗派を形成しました。
 
唯識学は、仏教の基礎学なので、当然と言えば、当然ですけど。
 
親鸞聖人は、14、5歳で学ばれたと言われ、道元は、9歳にして、唯識を学び終えたと言われています。
 
曹洞宗では、それに刺激されて、江戸時代までは、特に曹洞宗の僧侶は、唯識の習得に精進したようです。
 
明治時代に入って、曹洞宗では、その風習はなくなりました。
浄土真宗でも、残念ながら、唯識を勉強をする人は殆どなくなりました。
 
現代の仏教界を見ると、唯識は、いくつかの大学で学問として、学ばれているだけで、悲しいことですが、仏教を普及すべき布教使の方々の、唯識への関心は殆ど消え失せています。
 
仏教の基礎学であるにもかかわらず、です。
 
ところが、最近、世界では唯識が注目され始めています。
 
特にアメリカに於いては、マインドフルネスの大ブームから、唯識が追求され始めています。
 
マインドフルネスとは、最近、亡くなったティクナットハン師が唱えた仏教由来の瞑想法で「瞑想」という具体的な修行を通して、自分を高めることが出来る、東洋の実践的な宗教だとして、アメリカで人気を博しています。
 
私もNHKで、ティクナットハンが出ている「心の時代」を見ましたが、中々良かったです。
 
その人気の始まりは、1975年、マサチューセッツ医科大学のジョン・カバットジン博士が開発した「マインドフルネス・ストレス低減法」です。
 
カバットジン博士は、仏教の瞑想法の効果に着目して、そこから、宗教色を取り除いて、プログラム化しました。
 
この心理学的治療法は、慢性疼痛、心身症、摂食障害、うつ病などに効果があることが実証されており、現在、世界の七百以上の医療機関で活用されています。
 
マインドフルネスは、ストレス軽減や、集中力・創造力の向上にも効果的と言われ、アップル、インテル、ゴールドマン・サックスなど、世界に名だたる企業が社員教育に取り入れています。
 
中でもグーグル社が、ティクナットハン師による、マインドフルネスの指導を社員に受けさせたことは大きな話題になりました。
 
これをきっかけに、日本でも関連本の出版が相次ぎ、人気が高まりつつあります。
 
ティクナットハン師は、マインドフルネスを世界に広めようと、フランスとアメリカを拠点に活動していたベトナム人僧侶です。
 
ベトナム戦争の時代には、被災者の救援活動を行い、戦後は医療施設や、学校の設立、戦災孤児の支援活動などに尽力して「行動する仏教」(engaged buddhism)を体現しました。
 
1966年には、ベトナム戦争終結を訴えるために渡米し、彼の行動に感銘を受けたキング牧師によって、翌年度のノーベル平和賞に推薦されたことでも知られています。
 
そのティクナットハン師の思想と教えの土台になっているのが、実は唯識です。
 
このことから、今、アメリカでは唯識への関心が高まっているようです。
 
これは私にとって、とても喜ばしいことです。
 
この機会に、日本で長く学ばれ、実践されてきた唯識が、もう一度、日本で息を吹き返すことを、強く願わずにおれません。
 
唯識は心を深層から解明することに取り組んだ「心の科学」「心理学」です。
 
「唯識は単なる宗教ではなく、科学でもあり、哲学でもある」という三つの要素を兼ね備えた、古くて新しい普遍的思想なのです。
 
「心」ほど身近でありながら、とらえどころのないものはありません。
 
しかも、そのありようによっては、これほど自分を苦しめ、迷わすものはありません。
 
この唯識学を単なる知識としての思想ではなく、実生活の中で活かすようになれば、本当の幸せになれること間違いないと思わずにおれません。
 
私の実感から言いましても、唯識を正しく理解出来た分だけ、確実に執着は減って来ていますし、罪悪は弱くなって来ております。
 
ですから「唯識を極めたら、必ず生死の問題も解決できる」と私は確信しております。
 
現代に生きる私達が、直面する様々な問題を解決するために、唯識こそが、一番必要な教えであると強く感じています。
      〖終了〗
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