有沢祐輔の「空虚ノスタルジア」

オリジナルの詩や小説を更新しているアマチュア作家のブログです。


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前回の話はこちら

 

18話はこちらから

 

 

 

足を伸ばせる浴槽がこれほどまでに心地良いとは、実家住まいの時は気付きもしなかった。俺ん家は足を伸ばせるどころか身体を狭めないと浸かる事さえままならないし、銭湯やスパ銭の類は避けている。背中の痣に好奇の目が向けられそうな気がしてさ。

 

しかし、「良かった」とまでは言わないが、結果的にあの強姦が俺の進む道を決定づけたのは確かだ。大学を辞め、勘当覚悟で実家を飛び出し、この街に行き着いた。ネットカフェ難民と化すのも覚悟したが、姉貴のおかげで住まいが決まり、店長のおかげで仕事が決まった。

 

そういえば、俺も最初は[エスコート]のボーイを勧められたっけ。あまりにしつこいから顎をめがけて蹴りをお見舞いしたところ、アダルトショップの店員の案を出され…今に至る。しかし、あの蹴りを受けながらも、未だにケツを触り続けるのは、嫌悪よりむしろ感心に値する。別に服の上からなら…と許してしまう俺にも問題があるんだろうけど、雇ってもらった恩義に対するちょっとしたサービスだ。

 

 

「拓斗さん、ご一緒してもよろしいですか?」

「お前はさっきシャワー浴びたじゃん…ま、いいけど」

 

 

ドアから顔を覗かせた祐太は既に上半身裸、俺の意思に関わらず入る気満々なら、止めても無駄だ。こっちの寒さも考えず開けっ放しのドアの向こう、嬉々としてダークグレーのボクサーパンツを勢いよく脱ぎ去る姿はさっきの涙と同一人物とは思えない。ま、この方が本来の祐太なんだろうけど。

 

 

「シャワーだけじゃ物足りないですからね、それに2人の方が楽しいし」

「風呂に「楽しさ」は必要無いと思うが」

 

 

冷静ぶりながらも視線はかけ湯にはしゃぐ祐太の裸体を捉える。眼鏡を外した顔は小動物みたいな愛嬌があり、童顔。顔と同様に白さが際立つ華奢な身体は、青年というより少年のそれだ。そして、股間に視線を向けると…

 

 

「あんまり見ないでください。恥ずかしいです」

「そんなにデカけりゃ見るなって方が無理だ」

 

 

浴槽を跨ぐ瞬間、至近距離に晒された股間は顔や身体付きとはアンバランスなボリュームがあり、俺は内心、「負けた」と思った。だが、浴槽の中に向かい合えばそんなことはどうでもよくなる。

 

 

「顔、赤いですけど、もしかして照れてます?」

「うるっせーな」

 

 

祐太のサディスティックな笑みにそっぽを向くも、俺の胡坐に大胆に絡み付く足が、高揚を搔き立てる。冷静の鎧を限りなく素に近付けてきた筈なのに、そのメッキは呆気なく剥がれ落ちてしまいそうだ。我ながら情けない。だが、もう後には退けない、いや、退こうとも思わない。

 

 

「拓斗さん、身体洗いましょうか?」

「…じゃ、頼む」

 

 

「ただ傍に居たい」、散々泣きじゃくった後、祐太は絞りだすような声を上げた。強姦の背景を考慮したものなのだろうけど、それはつまり、セックスの有無は俺に委ねられたってことで、正直、要らぬ気遣いだとも思った。強姦を除けば全くの未経験、そんな俺が何を基準に選択すればいいのか、途方に暮れそうだ。

 

そりゃ、別に今すぐ判断する必要は無いが、祐太のボディソープを纏ったしなやかな指先が肌を滑るたび、俺の股間は敏感な反応を示す。少なくとも性欲は錆び付いちゃいないようだ。

 

 

「まさか、こういう展開になるとはな」

「そういうもんです。でも…拓斗さんが嫌なら僕は…」

「何を今更…」

 

 

腰の辺りに祐太の勃起がなぞるように触れると、俺は無意識的に振り向いた。まだ混乱状態にあるのは確かだが、この「ぬるま湯」に日常の欠片を奪われたのは確か。

 

もし、これが恋愛感情ならば…

 

 

「なあ、キスしていいか?」

「訊く必要は無いですけど」

 

 

憎らしい唇を塞ぐように、俺は突発的に祐太の頭を抱え、初めてのキスを交わした。柔らかな唇が更に熱を高め、舌先が入れば真似をする。甘い味はケーキの残り香だろうか、そんなことを考えながらも、俺は祐太の舌を離せない。

 

そろそろ終電の時間だろうか?だが、祐太の体温に本能を暴かれた今の俺にとっては、どうでもいい事だ…どうでも…

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

 

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