有沢祐輔の「空虚ノスタルジア」

オリジナルの詩や小説を更新しているアマチュア作家のブログです。


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前回の話はこちら

 

124話はこちらから

 

 

 

「…きろ…起きろ!」

「…ん…うぅん…うう…」

 

 

頬をパチパチと叩かれ、頭の微かな痛みと合わさり、俺は徐々に意識を取り戻していく。目の前にぼんやりと広がるのは暗闇であり、もしかしたらまだ夢の途中かも…などと思ったけれど容赦ない頬への一発がここは現実世界なのだと教える。

 

 

「いつまで寝てる?さっさと起きろ」

「痛いっすよ!つーか、殴ったのはそっちじゃん…」

 

 

起き上がろうとすると、俺はいつかのときのように、ベッドに仰向けに寝かされ手足に鎖が掛けられているのに気付く、部屋の灯りは何故か消えており、憮然とした表情で立ち尽くす零以外の気配は無い。

 

 

「まさか…俺を襲うつもりじゃ…」

「んなわけねーだろ。今日一晩、ここに泊まってもらう」

 

 

今日一晩?ということはあれから数時間程度も経っていないのか?衣服を脱がされた形跡も無いし、どうやら俺を拘束するために殴ったようだが、かといって大人しくしてるわけにもいかない。

 

 

「明日の新作発表パーティーで全てを終わらせるつもりなんですね?」

「終わらせる?とんでもない、これは始まりだ。俺と遥の新しい人生のな」

 

 

舞台役者のようなオーバーな台詞の言い回しに俺は狂気じみたものを感じながらも零の言わんとすることを察した。

 

 

 

-甲斐ハルの財産-

 

 

遥に接触したのは恋愛云々じゃない、彼女が引き継ぐ財産、そう考える方が自然だ。例え、ゴーストの存在を明らかにしても、甲斐ハルの築き上げたブランドの全てがなし崩し的に崩壊するとは限らない、むしろ、零の力を持ってすればそのスキャンダルさえも付加価値に出来るかも…

 

 

「最初っから財産が目的だったんですね?」

「ああ。っていうか、目が眩まない方がどうかと思うぜ」

「けど…俺らは所詮、日陰の人間、日を浴びる事は無い…。零さんが言ったんすよ」

「勿論だ。だから遥の存在が必要だった」

 

 

あまりに壮大な話に眩暈を感じた俺は、頭を傾け喉の渇きを訴えた。すると、零はペットボトルのアクエリアスにストローを付けて俺に飲ませた。さっき、コンビニ弁当を食べたので腹は減っていないが一晩中この状態ってのは何かと不便である。トイレとか…

 

 

「明日のパーティーの後に解放してやる」

 

 

パーティーにて全てを明らかにするのは遥なのだろう。零は日陰らしく、遠くから彼女の姿を眺め、そして、甲斐ハルの後を引き継ぐ遥を日陰として支えるつもりなのだ。なるほどね、零が日の当たる場所に出てしまえば[honeymoon]の存在も明るみになる可能性は充分だが、その方法ならば隠し通せるかもしれない。って、感心してる場合じゃないんだけどさ…

 

 

しかし…俺としてもこのまま明日のパーティーが終わるまで大人しくしてるわけにはいかない。せめてナギと連絡が取れれば…今更な話だが、どうして行き場くらい伝えておかなかったのか、自分の浅はかさが嫌になる…

 

 

「ちょっと…トイレに行きたいんすけど…」

「いいだろう。暴れるなよ」

 

 

鎖を解かれ、手足を軽く動かしてみると、麻痺したかのように手足はストンと床に落ちた。身体全体を覆う倦怠感…これって…

 

 

「さっきの飲み物に薬を仕込んでおいた。暫く身体の自由は効かないだろう」

「くそっ!」

 

 

思うように身体を動かせない俺を背負って、零はトイレまで運ぶ。勿論、スマホの類も全て取り上げており、この身体じゃ玄関まではとても走れない。諦めて明日を待つしか無いのか?

 

だが、深い溜息を吐き、便座に腰掛けると、絶望を掻き消すかのような思いもよらない事態が起きた。

 

ホテル内の火災報知器が一斉に鳴り出したのである。そして、それは俺…いや、俺らにとっての好機となるのだった…

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

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