有沢祐輔の「空虚ノスタルジア」

オリジナルの詩や小説を更新しているアマチュア作家のブログです。


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前回の話はこちら

 

123話はこちらから

 

 

 

レトロ街はいつもと何ら変わらず人々で賑わい、心地良い喧騒を醸し出す。ホテルでは無く、コインパーキングに車を止めた俺はしばしその風景に酔いしれながらエバシンスホテルへと足を踏み入れた。甲斐ハルは「テレビの収録がある」ためか携帯は繋がらないし、零は電源を切ってしまい、連絡手段は無い。焦りも急ぎも通用しないのなら18時きっかりに尋ねるのが最善の方法だろう。

 

 

「あら、時間ピッタリね」

「お招き頂いてありがとう」

 

 

1Fのカフェで時間を潰し、指定された部屋をノックすると、すぐに私服姿の遥が出迎えた。遥ならば普段甲斐ハルが使用している最上階も抑えられるだろうに何故普通の客室にしたのか?まあ、畳み掛けるよりじっくりと話を進める、これも最善かな。

 

 

室内に入ると目を引くのはリビングに置かれたコンビニの袋だ。中にはサンドイッチなどのパン類、おにぎり、ポテトチップなどの菓子類、コーラやお茶などの飲料水に弁当…ここで一夜を明かすつもりか?

 

 

「お腹空かない?ちょうどお弁当を食べようと思ってたの」

 

 

高級な物しか受け入れられない舌だと思い込んでいた俺としては少々意外だったが、実のところかなり空腹だったこともあり、彼女の提案には大賛成だった。

 

しかし…ルームサービスやレストランも勿論、完備されてるというのにこれだけ大量に持ち込みとは…一体、何を企んでいるのか?

 

 

 

「…ええ。零さんはママのゴーストよ。ママはね、もう終わってるの」

「終わってる?」

「10年以上…かしらね。ゴーストを使ったり人のデザインをパクったり、やりたい放題よ」

 

 

…ということは小久保真里の夫、稔のデザインの盗用も陥れる為でなく、単にパクっただけ?それを彼女の事務所社長が利用したのか?まあ、どちらにせよ稔が命を絶った事実に変わりは無いが、確かめられるものなら真相は追及したい。願わくば墓前に手を合わせるぐらいのことは…

 

 

「君たちの目的は何?ゴーストの存在を明らかにしてどうするつもりなんだ?」

「…私の目的は破壊そのものよ。零さんの目的までは知らないわ」

 

 

ノンアルコールビールを片手に遥はぶっきらぼうに言った。だが、その表情にはどこか躊躇いのようなものが見受けられ、俺は「迷ってるの?」と、尋ねてみた。彼女は「まさか!」と、首を振ったが、明らかな狼狽である。

 

 

「零さんが[honey moon]を辞めた」

「知ってるわ。それだけの覚悟よ」

 

 

クールな口振りの中に微かな震えがあり、俺は「迷い」を確信した。零がしようとしているのは[honeymoon]に対する裏切り、もっと言えば[honeymoon]という存在そのものを潰しかねない行為なのだ。ナギの危惧した通り、俺らは皆、路頭に迷う…

 

いや、もっと最悪な展開にさえ…

 

 

「零さんはどこだ?話がしたい」

 

 

俺の鋭い眼差しに、遥は冷ややかな表情のまま、口元だけをニヤリとさせた。すると、散らかったガラステーブルの隙間に背後から零の顔が覗く。

 

いつからここに居たんだ?

 

振り返った瞬間、俺の後頭部に割れそうな痛みが走った。倒れ込むときに見えたのは遥が両手に握った金属バット…

 

 

「しばらく眠ってろ」

 

 

薄れゆく意識の中、俺は「今日はスタンガンじゃないんすね…」などと呑気なことを口走った。

 

 

「危機管理能力の欠如は相変わらずだな」

 

 

零の薄い笑みに言い返す間も無いまま、俺の意識は完全に閉ざされる。次に目が覚めたとき、全ては終わった後なのだろうか?

 

最後に思ったのはそんなことだったのかもしれない…

 

 

(続く)

 

 

 

 

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