有沢祐輔の「空虚ノスタルジア」

オリジナルの詩や小説を更新しているアマチュア作家のブログです。


テーマ:

 

 

 

前回の話はこちら

 

104話はこちらから

 

 

 

無事…と、言えるかどうかは微妙だが、一平の中で零が荒々しく果てると、本日のショーは終了した。リアルさを追求とはいえ、コンドームは着用、それが「疑似」なる証明な気がしたが、客たちは限りなくリアルに近い輪姦に喝采を送ると、キョウコの指示に従い、順番に退室していく。

 

…たった1人の客を残して。

 

 

「いやー、お疲れさん、おかげで今日も大盛況だ。シャワーでも浴びてゆっくり休んでくれ」

 

 

一平の元に駆け寄るオーナーの白々しい台詞と対価の札束、ここまで再現する必要があるのかは疑問だが、不自然さを剥ぎ取るには必要な演技かもしれない。

 

 

「私が連れていきましょう。さ、立てますか?」

「…はい」

 

 

瑛斗くんが一平をシャワールームに連れて行くのを見届けると、俺は待機場に向かい、オペラ座の怪人みたいな仮面を脱ぎ去った。目、鼻、口の部分が空いているとはいえ、ずっとこんなものを纏うのはいささか息苦しい。

 

 

「どうだった?見学した感想は?」

「お前にされた仕打ちが過ぎって不愉快だった」

 

「根に持つタイプだ」って、薄く笑うとナギは上半身裸のまま、俺を出入り口に方に促した。石倉は若干怪訝そうな顔をしているが、これからがメインイベントの始まりだとは夢にも思っていないだろう。

 

 

「覆面の2人はもう帰してる。つまり、関係者しかここに残っちゃいない」

「石倉は関係者なのか?」

「一応ね。ま、別に帰ったら帰ったで構わないんだけど」

 

 

薄暗い階段を上った突き当りの部屋に俺らは身を潜め、「その時」を待つ。地下駐車場への扉も、キャスト用出入り口の扉も既にキョウコによって内側から開かないようにロックされているはずだ。ネズミ一匹、ここからは逃げられない。

 

 

「けど、本当に回収しに来るのか?第一、カメラが仕掛けてあるかも分からないんだろう?」

「カメラならプレイ中に零さんが見付けたよ。回収だって今日の内に済ませる筈さ」

「プレイ中?」

 

 

一平への輪姦に最中に隠しカメラを発見するとは…さすが、というか恐ろしいくらいだ。千里眼かよ…零の潜在能力に恐れおののいていると、階段を急ぎ足で上る音が聞こえ、俺らは身を潜めた。もし「アイツ」だったら…緊張が重々しく流れる。

 

 

「あれ?お前ら何やってんの?」

「…何だ。石倉か」

 

「何だとは何だ?」と、石倉がこちらに詰め寄った瞬間、地下から「ぐはっ!」という嗚咽混じりの声が聞こえ、俺とナギは即座に来た道を戻った。

 

 

鏡の部屋の入り口に唖然とした表情で突っ立っているのはカイルと一平。2人の視線の先の光景に俺らは「唖然」の意味を察した。零がいつもの冷静さを完全に失い馬乗り状態で瑛斗くんを殴っていたのだ。

 

 

「この野郎!!」

「うがっ!」

 

 

裏切り者…瑛斗くんに対する制裁のつもりか?

 

しかし、憎悪に満ちた零を放置するわけにはいかず、全員で零の身体を瑛斗くんから引き離すと、俺は横這いに倒れ込んだ瑛斗くんに「君だったんだね…」と、溜息混じりに呟く。

 

何かの間違いであってほしい、或いは、石倉の仕業であってほしい、などという少々身勝手な期待を今の今まで抱いていたのだ。

 

だが、そんな期待は藻屑となった。俺は絶望に似た溜息を吐くと、瑛斗くんの右手から小型のカメラを奪い去るのだった…

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

AD
いいね!した人  |  コメント(4)  |  リブログ(0)

有沢祐輔さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。