私は後部座席に座っていたのでよく見えていなかったのだが、おそらく母は少し車の流れが切れた瞬間、ぶつからないと踏んでちょっと無理矢理大通りに出たのだろう。
確かにぶつからなかった。しかし出たタイミングが最悪だった……。
母「あれ……追い掛けて来てる……？」
自分でもギリギリで悪かったと思った母は後続車の確認をしていたらしく、細い道に入っても付いてくる車に驚いてそう呟いた。
それを聞いて私も振り返って、見た。
すると……
絶対追いかけて来てる！
もう人相で分かる！
ホンモノだー
何のだ
黒塗りに角刈りパンチパーマにグラサン。
黒塗りに角刈りパンチパーマにグラサン。三密……じゃない、三拍子揃っちゃってるよー
ふざけてる場合じゃなく本当にヤバイ。
母よ、どうして星の数ある車の中からこの車の前を選んでしまったのか。
しかし、怖いもの見たさだったのか怖いもの知らずだったのかその時の私は道を曲がる度に振り返り後ろを確認。母に
「まだ付いてきてるよ！」
といらぬ報告
母から
「後ろをジロジロ見ちゃダメ！」
と言われるまでやっちゃダメな事に気づかない残念な子どもだった。
そしてとうとう自宅へ到着。
え。車降りるの？
降りて大丈夫なの？
と心配する間もなく
車の窓にホンモノさんが……
もう逃げられない……
体が動かない……
すると母に
「あんたは家に入ってなさい」
と言われ、ハッとして家の中まで猛ダッシュ。
どうしよう！お母さんが殺されちゃう！と本気で心配し、いても立ってもいられず２階に駆け上がり窓から駐車場を覗く。
謝る母と車体を見回るホンモノさん。ぶつかってないんだから傷はないはずなんだけと。
しばらくするとホンモノさんは何もせず、母も殺されず(当たり前だけど)帰って行きました……。そこが警察官舎だったことも良かったのかも……？
その日の夜、母が当時警察官だった父(コチラで騙されていた父)に何か仕事に影響があったらゴメンナサイと謝っていたのは聞いたものの、その後の事は何となく話題自体タブーになっていて話したことがありません。
この出来事のせいか私は今自分で運転していても、後ろがずっと同じ車だと何か悪いことをしたかとドキドキします
ちなみにホンモノ、ホンモノ言ってましたが実際にそういった筋の方なのかは分かりません
でも子どもの目から見ても一目でカタギじゃないと感じるような風貌でございました。
もう30年位前の話だし今度聞いてみようかな
忘れてたりして。
忘れてたりして。
おしまい
