1997年夏、私は香港にいた
ちょうど香港が中国に返還される年に私は香港で暮らしていた
香港はどこもかしこもお祭りムードで、とくに外国人が集うランカイフォンはにぎわっていた
私は香港の高校に通っていた
香港のインターナショナルスクールはアジア人の富裕層が多く、日本人、大陸の中国人、ロシア系中国人、韓国人など
私たちの遊び場ではジャッキーチェンの息子やサモハンキンポーの息子などもよくみかけけた
当時香港はお金さえあればどんなきらびやかな生活でも送れた
友人には香港の宝石商の娘やロシアの外交官の息子がいた
マルコムと出会ったのは香港の高校だ
私が高校3年生でマルコムが高校1年生だった
マルコムの素性はよくわからない
マルコムはロシア系中国人だったから家族はロシアにいて、自分は香港で仕事をしている叔父と暮らしていた
マルコムは中国人の顔立ちに明るい栗色の髪の毛と緑の目をしていた
とても不思議なルックスだが当時まわりにこんな感じの子はいっぱいいいた
マルコムは背伸びばかりしている、私から見たら幼い少年だった
大人ぶってはみるけどまだまだ純粋な男の子という感じが可愛かった
グループで遊ぶ時には手をつないで出かけたけど恋人でもなかったし好きでもなかった
香港が時代の波に飲み込まれていくのを傍観している仲間、そんな関係
あの頃私が自信過剰だったように、彼もまた根拠のない自信に満ち溢れて輝いていた
私たちは何度もキスをして体を重ねようとしたけど彼はまだ未熟で思い通りにはいかない
そのもどかしささえも懐かしい
今は世界のどこにいるのかわからない
でも、今でも香港にいくとかすかに思い出すのだ
香港が一番輝いていた時代と、輝いていた自分と彼のことを