さいこうの寄り道
コードアリアケ
①
「今日も寄り道をしよう」
”ぼく”は”いつも”のように家に帰る。そう、”いつも”のように。”いつも”って何だっけ?そんな疑問さえ抱かず家に帰る。
だが、”いつも”と違う事をしたい。そんな衝動に駆られるのも確かだ。家に帰る”いつも”は内包しつつ”いつも”と違う世界を夢見る。そんな”ぼく”だ。
ここは21世紀初頭の極東日本。そんな日本のさらに田舎のとある地方都市。そこが”ぼく”の”いつも”の所在場所。”ぼく”の歳は?性別は?それは些細な事柄だ。僕は”いつも”を愛している。しかし”いつも”と違う事もしたい。そう浮気者だ。
そんな”ぼく”が実践してる浮気が”寄り道”である。寄り道は”いつも”を内包しつつも”いつも”から”ぼく”を解放してくれる、そんな最高な浮気相手だ。
「今日はどこに寄ろうか」
”ぼく”は迷っている。家路の途中、”いつも”の分かれ道。違う世界を夢見ているはずの”ぼく”が迷う。なぜ迷う?それは嬉しい誤算か?はたまた予想外な現象か?よくわからず迷う”ぼく”。実は、迷うのはいつもの事。言うまでもないが、なぜ迷っているかは分からない”ぼく”である。そんな”ぼく”に近寄る人影が一つ・・・
「お困りですか?」
見ず知らずの”他人”が”ぼく”に話しかける。その”他人”を”ぼく”は知らない。いや、正確には恐らく知らない。
「(別に困ってはないんだけど)」
”ぼく”は嫌悪感を抱きつつも返答を考える。考えるといっても刹那の事。いや、考えるまでもないか、”ぼく”という存在から導きだされる返答は決まっているのだから。
「いえ、別に困ってはいないのでお構いなく」
”ぼく”はそう”他人”に答える。”ぼく”という存在はそういう返答を事前に用意している。そう、そういう存在なのだ。
「そうですか。では」
”他人”はそう告げると”ぼく”に会釈し道を進む。そう、ただの通過儀礼のように歩を進める。”他人”は進んで行く、”いつも”と違う帰り道を。”ぼく”の”いつも”じゃない方へ。
「・・・」
”ぼく”はいつものように後を付ける。そう、今日の”寄り道”が決まったのだ。決まったら善は急げと足は軽い、それが”ぼく”だ。今日の寄り道はどんな寄り道に成るのか?期待に胸を膨らませ、”ぼく”は”いつも”から解放される喜びを抱き、道を進む。
続く
⇒②(少々お待ちを)