長編デビュー作「いつも心はジャイアント」で注目されたスウェーデンのヨハネス・ニーホルム監督が、時間のループに陥りサイコパスや人喰い犬からエンドレスに襲撃される夫婦を描いたホラー映画

- KOKO-DI KOKO-DA - 監督　脚本　製作　撮影　ヨハネス・ニーホルム

出演　ペーテル・ベッリ、レイフ・エードルンド・ヨハンソン、イルバ・ガロン　他

こちらは２０１９年制作のスウェーデンデンマーク

の合作映画です。（８６分）

　一人娘のマヤを愛する父のトビアスと母エリン。３人はマヤの誕生日を祝うためデンマークのスケーエンを訪れますが、現地の料理を食べたエリンが貝アレルギーを発症し病院に運ばれてしまいます。治療が早かったためエリンは一命を取り留めますが、同じ料理を食べたマヤが貝の毒素に当たり命を落としてしまいます。

その３年後、マヤの死以降夫婦関係が冷めきっているトビアスとエリンは、２人の関係を取り戻しマヤの３周忌の祝いをするため森の中でキャンプをすることにしますが、そこには恐ろしい殺人鬼が徘徊していて、、。

たまたま観た予告編が気になってお取り寄せしてみた本作、作品紹介では一応ホラー映画としてジャンル分けされている作品ですが、蓋を開けてみたら予告のイメージ通りの摩訶不思議な作品世界が広がっておりました。

娘を亡くし、いつしか愛情も薄れてしまった夫婦が娘の３回忌の記念としてキャンプへ出かけます。しかし、夜中に妻がトイレへ出ていくと謎の３人組が何処からともなく現れて妻を殺害、夫も捕まり３人組に殺されてしまうのでした、、。

と、再び同じテントの中で目を覚ます夫、妻は用を足しに外へ出ていきます。そして再び３人組が現れて妻を殺害、同じように夫も捕まり、、という場面が幾度となく繰り返されます。

但し、最近流行りのタイムループ映画とはちょっと違ってかなり残酷でその死は悲劇的に描かれます。このループはどうやら夫婦に起きた娘の死という悲劇と悲しみ、そして二人が抱える拭え切れない後悔という闇に関係している事が分かってきます。

物語上、説明のない夫婦の惨劇を補足するように、ウサギの親子を描いたファンタジックで悲しい影絵が劇中に差し込まれ、夫婦の心象を映し出します。それに対するように繰り返し描かれる出口の見えない絶望の一夜。

この映画の殺人鬼である３人組は他のホラー映画に比べてもかなり特殊です。リーダーらしき老人の男はブルジョアが避暑地で着るような白の上下で一見紳士風、言葉使いもしっかりしているものの言葉の端々にサイコ臭が漏れています。

連れの２人は家族なのかも分からない関係で、一人はこれまた森という場所に相応しくないドレスをまとった長身長髪の女、しかしその表情からは日常からドロップアウトした殺気がうかがえます。もう一人は最も森ホラーらしい見た目をした巨漢の男、何故か腕には死んだ犬が抱かれており、もうその時点で話は通じない相手だと分かります。

誰の救いもない人里離れた山奥で、回避する手立ても少ない孤立した夫の絶望感、愛情の冷めた妻を守り、繰り返される悲劇と共にその恐怖と対峙して出口を模索する彼の焦りといら立ちの先に見えるものはいったい何なのか、、。

「ココディ・ココダ」というタイトルはフランス民謡から取られたもので、ニワトリの鳴き声のコケコッコーを意味しています。日本では「夜が明けた」という題名で訳されていて、「コッコケコッコ　夜が明けたお空は真赤な朝焼けだ元気よくさあ飛び起きて」という歌詞。

ここからも分かるように、この夫婦に起きた娘の死という悲劇と苦悩を象徴する３人組の殺人鬼。いともたやすく潰されるテントの脆さは家族の象徴か、防ぐ事の出来ない恐怖と絶望、そして毎日幾度となく頭に浮かぶ思い出という悲しいループを如何に受け入れ、乗り越え、互いに浄化するかという夫婦の夜明けまでが描かれた作品です

同じフレーズがループする民謡、尿意と覚醒、眠りから覚める事で繰り返される悪夢、森に不似合いな３人の殺人鬼、逃れられない記憶、死んだ犬にオルゴール等、辿り着いたその先で様々な謎の全ては一応繋がっていきますが、最後は観客の手に委ねられている作品です。

サイコなホラー映画だと思ったら、ホラーの顔をした夫婦の葛藤ドラマでありました。というお話、ちょっと変わったアプローチの作品ですが、普段とは違った映画をご覧になりたい方には楽しめる作品だと思いますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

では、また次回ですよ～！　

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