1930年代にチェスター・グールドによって誕生した人気アメコミの実写映画化作品。

 

 

 

 

 

 

      -  DICK TRACY  - 監督 製作 ウォーレン・ベイティ

 

出演 ウォーレン・ベイティ、アル・パチーノ、マドンナ、ダスティン・ホフマン他

 

こちらは1990年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(105分)

 

 

 

 

  1930年代の犯罪都市。 呼び出し無線を腕に神出鬼没の活躍をする刑事ディック・トレイシーの姿があった。 彼の敵は街を牛耳るギャングの親玉ビッグ・ボーイ・キャプリス。 折りしもキャプリスは“クラブ・リッツ”のオーナー、リップスを殺し、その歌姫ブレスレス・マホニーを手に入れた所だった。 リップス殺しを捜査するトレイシーの片腕となるのは、彼に拾われたスリの少年キッド。 

 

 

 

 

トレイシーは密告屋のマンブルスから情報を聞き出し、リップスの愛人だったブレスレスに証言を求めるが、彼女が引き換えに要求するのはトレイシーの愛だった。 しかし彼にはテス・トゥルーハートという最愛の恋人がいた、、。 

 

 

 

 

悩む間もなくトレイシーをキャプリスの手下が襲う。 絶体絶命の所をキッドの機転によって逃れることトレイに成功したトレイシーは、キャプリスのアジトを盗聴してその裏をかくことによって大反撃に出るが、成功と裏腹にテスは彼の愛を信じられなくなって去ってしまう。 傷つくトレイシーのもとに彼女の手紙が、しかしそれはワナだった、。

 

 

 

 

久しぶりの鑑賞になった「ディック・トレイシー」は、大好きなアル・パチーノが出ている事もさることながら、ベルトルッチ作品等で独特の美意識を見せてくれるカメラマンのヴィットリオ・ストラーロが撮影しているという事を目当てに数回観返している作品です。そのくせ観返す度になんとも微妙な気持ちになるというのがこの作品の正直な感想で、毎回それを確認する為に観ているんじゃないのかと自問してしまうのでありました。

 

 

 

 

多分「ロジャー・ラビット」や「バットマン」の映画化が盛り上がって、その勢いを汲んで製作されたと思われる本作は、映画界のビックネームであるウォーレン・ベイティが主演、監督、製作を担当している事からなのか、渋めのオジサマ俳優が大挙出演されているのも見物の一つで、本作が初めての共演となるアル・パチーノとダスティン・ホフマンやジェームズ・カーン 、キャシー・ベイツ、チャールズ・ダーニングなんていう方々が原作に寄せた特殊メイク姿で楽しそうに演じている姿が見られます。 

 

 

 

 

ただ原作の「ディック・トレイシー」自体の知名度は、多分本国以外ではさほど知られていないと思われ、悪役だけが特殊メイクをしている特異な世界観に多少の違和感を覚えてしまうのは自然な事です。

 

 

 

 

それと同時に、このアメコミが原作の原色の世界をそのまま映画として映像化しているヴィジュアルの面白さと異様さがこの映画最大の魅力でもあります。 セットや背景がまっ赤や緑だったり、遠景がそのまま絵を使っていたりとかなり実験的な映像が楽しめます。 衣装も30年代を舞台にしていながら、赤青黄色という原色で彩られたカラフルで可愛い色彩が画面を被っています。

 

 

 

 

ただ、この実験的ともいう遊びがこの映画を微妙なものにしているのも確かな要因で、色鮮やかな背景の前で、特殊メイクをした人物がポップな原色のコートを着て演じている内容は、30年代を舞台にしたの大人のフィルムノアールの刑事ドラマというカオスな世界。 内容は大人向けなのに見た目は幼稚というアンバランスさが、この映画をどう観たらいいのか悩ます大きな原因になっているのであります。 

 

 

 

 

そんな映画のバランスを辛うじて保たせているのがマドンナ演じるクラブシンガーのブレスレスと少年キッドの二人。陰と陽の真逆のキャラクターながら、二人の魅力によって単調な物語が生命力のある作品に変化し彩られています。

 

 

 

 

物語自体はかなり大味な作品ではありますが、この特殊な映像美とけれんみ上等な作風、フィルムノアールと極彩色のミスマッチ感、そしてアル・パチーノの怪演とマドンナのディートリヒを彷彿とさせる妖艶さ等、視点の置き方によっては魅力満載の作品で、やっぱり嫌いになれない、憎めない映画の一本である本作を、機会があればご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

 

本作でアカデミー歌曲賞に輝いたマドンナの挿入歌。 宜しければです。 音譜